【KAC20235】ようこそ魔導研究所へ

かみきほりと

01 魔力錬成繊維「マジックワーム」

 研究室に持ち込まれた異様な物体を見つめる。

 ここは魔導研究所なだけに、魔力に関係する物……だとは思うんだけど、正直、見ていて気持ちのいいものではない。

 わざわざ女性陣が食事に行くタイミングで見せてきたということは、これが嫌悪感を誘うってことを理解しているのだろう。その上で、私に見せてくるのだから困ったものだ。


「これは、今後、世界を変える物になる。だから、一緒に研究をしてくれる同志を探しているんだ。当然、お前は断らないだろ?」


 これが年功序列による上下社会の悲しさというものか。私には、先輩の提案を断る権利がないらしい。

 私には私の抱えている研究がある。だから、変な事に巻き込んで欲しくはないんだけど……

 そう思いつつも、とりあえず説明だけでも聞くことにした。……というか、余程崖っぷちなのか、いつにも増して迫力があるし、なんなら軽く殺意すら感じる。ここで下手に断ったら、本気で命が危なそうだ。

 私の、研究者としての命が……


 見た目はミミズだった。

 それが小さな箱に何十匹も……

 だが、もちろんミミズではないし、なんなら生物ですらないらしい。

 先輩の説明では、これはマジックワームという魔力で錬成した繊維状の物質で、流す魔力に反応して伸びたり縮んだりするらしい。


「これを使えば、パワードスーツを作ることもできる。これで軍部の奴らを見返してやれるぞ!」


 どうやら、これを使って人工筋肉を作るつもりらしい。

 試しに一本手に取ると……簡単に千切れた。


「な、なんだよ。もちろん、これは試作品。改良して強度や伸縮率を高めるし、魔導効率も高める。当然、費用も大幅に圧縮するつもりだ」


 軍部から役立たずだと言われ、予算を大幅に削られたことに憤っているのは分かるけど、その鼻を明かすため大幅な圧縮が必要なほど予算がかかるっていうのは本末転倒だ。

 私は回答を保留して、上司に助けを求めることにした。

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【KAC20235】ようこそ魔導研究所へ かみきほりと @kamikihorito

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