プリンシパル ~ 美しい筋肉

KKモントレイユ

バレエダンサー ~ 美しい筋肉

 岡野里美おかのさとみはクラスの河合恵人かわいけいとと文化祭でバレエを披露することになった。バレエ教室に通っていた彼女は周りから「お嬢様」と言われプリマ気分だ。

 恵人はバレエをやっていたらしいということで踊ることになった。里美は恵人と踊ることが不満だった。

「恵人君バレエ経験者なの?」

「少しね」

「『海賊』のアダージオを踊ろうと思うけど、できる?」

「え、里美ちゃん踊ったことあるの?」

「やればできるわよ」

恵人は仕方なく踊ることにした。リフトやターンのサポートを練習するが息が合わない。

「きちんとサポートしてよね」

「もう少し近くで真上に飛んでくれないと持ち上げられないよ」

『海賊』は見せ場で男性が女性を頭の上まで持ち上げ女性がポーズをとる。ここは息が合わなければ持ち上げられない。

「もっと筋肉つけてよ」

リフトは本番まで一度も成功しなかった。


文化祭当日

『海賊』は男性は上半身裸という衣装。恵人の身体からだは盛り上がった筋肉ではなく、線で描いたような美しい筋肉だった。瞬発力のある軽い筋肉。バレエダンサーが身にまとう筋肉だ。

 客席には大勢の観客。美しい曲で踊る二人。緊張していた里美はリフトの直前トゥシューズが滑り恵人に身体からだを預ける形になった。助走、踏切ゼロ状態だ。

 次の瞬間、恵人は里美を頭の上まで持ち上げた『ここから持ち上げる?』その高さは里美にとって初めてだった。

『怖い』

「背中から腕を広げるように胸を張れ」

恵人の声が聞こえた。

美しい里美のポーズに客席から大きな拍手。

 そして雲の上を飛ぶような軽いジャンプ。寸分の狂いもなく回転に勢いをつけてくれた。摩擦を感じないターンから曲に合わせピタッと止めてくれた。

最後は華やかな女性のポーズ。男性は女性をたたえるようにかしずく。


 満場の拍手のなか客席にプリマバレリーナ河合瑞希かわいみずきの姿が見えた『え、恵人のお姉さん?』驚く里美に恵人が「上手だったよ」と言ってくれた。

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