益琉君

益琉君の8つの偉業

　益琉君は転入生。僕たち1年2組を混沌の坩堝に陥れる要注意人物。

　──でも、いい奴だ。

「しまった……箸忘れた」

「任せな」

「でも、益琉君、割り箸一膳じゃ……」

「割って、更に、フロントダブルバイセップス！」

「……割り箸って、1/4サイズになるんだね、縦に」

「やばっ避けられ！ 」

「任せな、フロントラットスプレット！」

「益琉アウト！ ………アウト！ アウトだってば、外野出ろ裸族！」

「はっはっは！」

「ドッヂボールは避ける競技……」

「車がっ！」

「ふんっサイドチェスト！」

「車が逸れた……って益琉君！！」

「骨は折れたが筋肉は無事だ。心配かけたな」

「ドラミング……すげぇな」

「益琉を当てにして学祭の劇をキングコングにしたが……ボディービル大会だ、こりゃ」

「バックダブルバイセップス！」

「キングコングのクオリティー高いけど、シナリオペラッペラ」

「……益琉君」

「夏祭りの帰りとはいえ、深夜の散歩は解放的だね」

「あなたと遊びに行くつもりなんて無いって言ってるじゃない！」

「あ、あのナンパされてる娘、多分うちの生徒」

「バックラットスプレット！」

「逃げてったね、効果は抜群だ！……そのポーズでムーンウォークは怖いもの」

「益琉君──本屋でバイトかぁ」

「モストマスキュラー！」

「ポージングしながら本を運んでるけど、お店で裸族はヤバイでしょ」

「サイドトライセップス！」

「益琉君、肩にぬいぐるみ乗せても、愛らしさは……告白どころか逃げ出されてるよ」

「サ、サイ、ド、ト……」

「泣くなって益琉君……ってぬいぐるみで鼻かむなっ！」

「アブドミナルアンドサイ！」

「すごっ！野球でそのポーズは違和感ない！って、キャッチャー怒って──」

「益琉！ ボールぐちゃぐちゃに潰すな！ これで何個目だと思っていやがる！」

「……あり得ない変化球だと思ったら」

　益琉君は、いつでも笑顔で真剣だ。僕は彼が眩しい……憧れないけどね。