16
スライムは、ミーナとルーシー一家の様子を見て、眉をしかめたり笑顔になったりと、表情をくるくる変化させていた。険しい顔のスライムを見て、ミーナが声をかけると、途端に笑顔になる。
「スライム君、ドラゴン族の料理は口に合わない? やっぱり、オキュトパスーンが苦手だった?」
「きゅーきゅ」
スライムは、ミーナが声をかけてくれたことで、しかめっ面をとたんに笑顔にさせた。ぶんぶん首を振って、料理は美味しいとアピールする。
「スライム君ったら、ミーナがうちの家族と仲がいいからすねちゃったのかもね?」
「え、そうなの?」
「きゅ」
「あちゃー……、スライム君は、初めてここに来ただんだもんね。私ばっかり楽しいんで、配慮が足らなかったね。ごめんね、スライム君」
「きゅーきゅ」
食事も一通り終わったことで、本来の姿に戻りミーナの膝の上に乗る。ふるふる震えているのは、大喜びをしているからだろう。
その夜は、一応年頃の男女が同じ部屋は問題だと言われ、スライムは別の部屋にベッドを用意されたが、ミーナから離れようとしなかった。
「困ったわねぇ。でも、スライム君って、さっき人型になったばっかりなのよね? 赤ちゃんみたいなものなんだし、きっと寂しいのよ。大丈夫なんじゃない?」
「でも、人化したらミーナに似合いの年齢っぽかったし。やっぱり危ないよ」
「きゅ」
スライムには、一体全体、何がどう大丈夫なのか、危ないのか、さっぱりわかっていない。ミーナも、まん丸フォルムの彼が、アブナイことをするわけがないと思っている。人化したところで、きゅるんとした清純そのものの少年のような見た目だし、そもそもスライムには性別がない、はずだ。
「うちのコに限って、皆が心配するようなことはないわよー。ねー、スライム君」
「きゅー」
結局、ミーナに用意されたベッドで、ふたり仲良く眠ることになった。
うちのコに限ってという言葉は、ある意味フラグだったのだろうか。安心しきって眠りについたミーナが次に目を覚ました時、スライムの姿が変わっていた。
「ん……おは、よ…………。え? は? スライム君、なの?」
「おはよ、みーな」
「こ、言葉が…………」
「すこし。がんばった? おぼえる、おぼえ、た。あってる?」
「うん、あってる。ケド…………。なんで、姿が変わって?」
「るーしーの、おにーさんくらいのほうが、みーながすきかなって。ダメ、だった?」
「ダメじゃない、ケド。いや、ダメ、かも?」
数時間前まで、あんなにも天使のように愛らしかった彼の面影は、ほとんどなくなっていた。
まず年齢が、ミーナよりも年下風だったのが、今は20歳前後の青年になっている。短髪だったはずの柔らかな髪は、腰のあたりまで伸びていた。
華奢な体系は、ほどよく鍛え上げられたかのようにがっしりしている。
ミーナと同じくらいかそれよりも薄かった胸元は、今や広くてたくましい胸元に変わっており、腹部には無駄な肉がほとんどついていない。うっすら割れたシックスパックがまぶしいほど。脇から足にかけては、なだらかにカーブを描き、ほんのり色気が漂っている。
足も太くなっており、175センチほどのミーナよりもはるかに長くなっていた。
どこからどう見ても、成人男性の姿の彼は、昨日初めて出会ったときのように、一糸まとわぬ姿をしていた。いや、ベッドのシーツが、かろうじて彼の大事な部分付近だけ隠している。それがなければ、スライムのスライム君が、コンニチハーと挨拶していただろう。
ミーナは、昨日ルーシーが貸してくれたパジャマを着ている。だが、寝相の悪い彼女の上着は、おへそまで丸出し状態だった。
「みーな、かぜ、ひく」
にっこり微笑みながら、元かわいい系男子の、現かっこいいスライムが、シーツを彼女に優しくかけてあげようとシーツを手で掴んだ時、かろうじて隠れていたそこがミーナの視界にばっちりうつってしまったのである。
世界唯一の人間である私と、もちふわひんやりスライム君 リフレイト @rihureito
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