第4話「静止」について。

静止してるとは言ったが実際には時間が目まぐるしく過ぎている。ふとした時に止まってる感覚に入ってあれが嫌だ、これが怖いとなっている。1時間もそれについて考えてないのに、たかだか数分でとても長い時間静止したようになる。楽しい時間が秒で過ぎるように、嫌な時間はとても長く感じる。そう考えると生きるのに抵抗を抱いた時点で人よりも長く生きてる感覚になる。生きていたくないのに長く感じる、矛盾した人生。自分が何に不満を抱いてるのか、死ぬ事の何が怖いのか、具体的にはわからない。明確なものがないからこそ対処が難しい。

人生のガイドブックがあったらすぐに買うと思う。だがそんな物はこの世界にはない。ただこうすると運気があがるかも!今しかできない事を!朝はカーテンを開けるなどの当たり前の事が書いてある本しかない。結局みんなそこまで生きる事について考えてないのか、それともわからないのか。人生こうしたら良くなりますなんて確証はどこにもない。人は不安になると誰かに保証してもらいたくなるし、不安をどうにかして消したくなる。不安を不安のままで放置しているとどんどん膨らむ気がしてならないからだと思う。でも実際は、膨らむ物もあれば時間と共に萎んでいく物もある。だがいざその時に直面するとこれは絶対に膨らんでしまうと考えてしまう。時間が経てば解決する事もあるのに、人は不安に陥るとどんどん自分から不安に突っ込んでいく。突っ込む気はさらさらないのに気づいたら底なし沼にハマりに行っている。

その感覚を私は静止だと思っている。底なし沼にハマったらもがけばもがくほど早く落ちるので、その時は冷静に動かず何が不安だったか、どうして生きてるのが不安になるのかなど考えている。実際は底なし沼にハマった事すらもないのに。

人より変な考えを持っていると思った事もあるが、考えてる事なんて見た目だけでは誰にもわからない。この考えで生きてくととても人生が長く苦痛に感じる時が増えるのであまりおすすめしない。おすすめしないのに私はもう抜け出せない。今日も底なし沼で静止している。

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私は生と死の中で静止している 夜。 @Yoruend27

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