ジム通いは憧れ

九月ソナタ

あこがれのジム

電車駅の近くにジムがあり、ムキムキのお兄さんやお姉さんがよく出入れしていた。

トレーニングウェアではいっていったり、ジムバックを肩にぶらさげていたり、ああいうのは私の憧れだ。


私は運動が大の苦手なのだが、健康のために何かしなくてはならないことはわかっていた。

だから、初級の「歩く会」にはいった。1年くらいで中級に昇格して、少し自信がついた。



次は、筋トレだ。

友人のジョンが町主催の運動教室があると教えてくれた。軽体操とダンビル運動で、シニアが多いから、やれないことはなさそう。楽しく通っていたら、先生が引き抜かれて教室がなくなった。


すると、ジョンが今度は高校の放課後に、運動クラスがあるという。

こちらは、まずグラウンドでストレッチをして、次に高校の周囲をパワーウオーク。

こちらも気にいったけれど、高校が放課後活動の補助をやめたので、消滅した。


ジョンが、今度は駅の近くのジムに行けばいいという。

コストコでクーポンを買えば、安い。

そこは、私の憧れのジムだ。

行ってみたい気持ちは山々だけれど、筋肉もりもりのアメリカ人の中にはいって運動できるのかな。笑われたりしないかな。


行って驚いたのは、どの時刻に行っても、筋肉兄さん姉さんが運動しているいうこと。大きなウオーターボトルを横において、大量の汗をかいて、それは熱心。

そしてわかったことは、彼らは自分の筋肉を育てることに集中していて、他人など見てはいないということ。


私は自意識過剰すぎた。運動ができようができなかろうが、関係ない。好きなように運動をすればよいのだ。


このお兄さん達と並んでトレッドミルで歩く時(彼らは走る)、私はとうとうここまで来れたのかとすごい満足感を覚えた。

運動コンプレックスの私が、マシーンを使って運動しているのだ。キセキ。



でも私の筋肉がつく前に、ジムはパンデミックで潰れてしまった。

残念でならない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ジム通いは憧れ 九月ソナタ @sepstar

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説