妹との卒業記念写真
せにな
非力な兄
少し離れたところから俺を見つけ、妹がこちらに向かって走ってくる。
「卒業おめでとう、マイシスター」
俺も手を叩きながら妹に近づく。
「ありがとーマイブラザー。早速写真撮ろ!」
「うぃー。ちょっとカメラマン頼むわー」
妹に返事をした後、俺は隣にいる友達にスマホを渡す。
「おれカメラマン?」
「そうだね。ほらここ立って」
友達に指示を出したあと、妹の隣に立つ俺。
するとなぜか俺の後ろに回り込んでくる妹。
「おんぶしながら撮ってー」
「おーけ、まーかせろ」
荷物を全部友達に預けた俺と妹は先程の位置に戻り、俺は膝をかがめる。
「えー!怖!」
「はよしろー」
「──んしょ」
妹が背中に乗った瞬間体が崩れかける。
何とか踏みとどまって、カメラの方へと顔を向ける。
「おっもいな」
「私45キロだよ?」
「45!?ちゃんと飯食えよ」
「お兄ちゃんはちゃんと筋トレして?」
「うす……」
そんな話をしていると友達が「撮るよー」と声をかけてくる。
「いいぞー」
「はいっチーズ」
スマホからシャッター音が2回ほどなり、友達は写真を見せながらこちらに近づいてくる。
俺も妹を背中からおろし、友達の方へ近づく。
「めっちゃ苦しそーじゃーん」
妹が笑いながらそう言ってくる。
「非力ですみませんね」
「そんな非力のお兄ちゃんにもう1つお願いしたいことがあるんだけど、いい?」
「ええぞ」
「お姫様抱っこで撮ってー」
「え、うーん……まぁよかろう。俺の全筋肉を生贄に撮ってやろうじゃないか」
そう言った俺はまた膝をかがめ、妹の太ももと脇の下に腕を通して持ち上げる。
「──よいっしょ」
「うおー!すごーい!」
「ちょっ、暴れんなって。はよ撮ってくれ」
「はいはいー、はいチーズ」
次はスマホから3回ほどシャッター音がなり、友達が写真を見せに近寄ってくる。
写真を撮り終わったことを確認した俺は急いで妹を下ろして腰に手を当て、体を伸ばす。
「めっちゃ腕震えてたー」
「こっちから見てもめっちゃしんどそうだったわー」
妹と友達が笑いながらそう言ってくる。
「非力ですみませんねー。しないだろうけど筋トレ頑張って筋肉つけまーす」
「がんばー」
未だにクスクスと笑す2人をよそに、俺は体を伸ばし続ける。
妹との卒業記念写真 せにな @senina
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