最終話
「にしてもびっくりだ」
由貴は動画を編集している。しかしアクティブな登山が体に来たのか全身湿布だらけである。部屋もツンとした湿布の匂いが漂う。
「あのまま除霊してたら亜美さんは死んでしまうところだった」
とバスローブを着たコウが風呂場から出てきた。毎晩塩風呂に入っているが流石に今日は疲れがとれるらしい炭酸の素を入れた風呂に入った。
「生まれ変わりでなくて乗り移りかぁ。髪の毛だったら切られたらおしまいだし……皮膚とか、目玉とか」
「目玉に乗り移るケースはなんかで聞いたことあるな」
と今までにないことで盛り上がった。
「それよりも由貴、湿布貼ってくれー」
とおもむろにバスローブを脱ぐコウ。すっぽんぽんである。
「パンツくらい履け」
「炭酸風呂めっちゃ体暑くなるなぁーあれでも疲れ取れん! ふくらはぎパンパンだから早く!」
うつ伏せになるコウにハイハイと由貴は湿布を貼る。
「ついでに腰も揉んで」
「ハイハイ……てやるか! にしてもそのだらしない体なんとかしろよ」
とコウの体を見る由貴は笑った。
「除霊師もいつどこで何あるか分からないから筋トレ必要だなぁ。やるか、明日から」
「明日からか、お前の明日からははるか向こう何年先もないことだな……」
と由貴はいいつつも自分の体もダルダルでお腹も出ている。
そのお腹をコウにつままれた。
「お前も言えないじゃん」
「るせー! そういう家系だ」
たしかに、と幼馴染同士だから由貴の家族のことがすぐ思い浮かんで納得するコウ。
「残念だがあのお美しい亜美さんには不釣り合いだね」
「筋トレ好き元彼と、山岳救助隊のマッチョだもんな……婚約してるのなら諦めがつく」
どうやら由貴は亜美に一目惚れしていたようだ。
「にしても筋肉に乗り移って今の彼氏と触れ合うって心中複雑だろーな」
「まぁ、知ったこっちゃない」
「キスする時もまだしも、ねぇ」
2人はもう深く考えないことにした。
終
KAC20235 シンクロカップル 麻木香豆 @hacchi3dayo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます