筋肉の神となりしマッチョ
杜侍音
パワー‼︎ ヤー‼︎
「ねぇ、なんで分かってくれないの……ひどいよお兄ちゃん……」
「
五つ離れた最愛の妹、莉奈が目に涙を浮かべたとしても、僕の決意と足腰は揺るがない。
「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはね……さいっこうの筋肉の持ち主なんだよ⁉︎ 飛び跳ねた僧帽筋、デカすぎる大胸筋、爆発寸前の大腿四頭筋に、腹筋板チョコバレンタイン! 筋肉の持ち腐れだよぉ、今すぐ大会に出よ⁉︎ ねっ⁉︎」
「ま、ちょっ、無理だぁってっ‼︎ 人がいっぱいのところ行きたくないもーん‼︎」
「そんなこと言わずにぃ……! もう出場登録したんだからっ、ちょっと舞台でポーズとったら終わ……! 全然動かない‼︎ さすがだねお兄ちゃん‼︎」
莉奈は僕の大黒柱のような腕を掴んで家から連れ出そうとするが、家の大黒柱を掴む僕は指がめり込むばかりで一切離れない。
莉奈が言う大会とはボディビル大会のこと。
人見知りで緊張しいでコミュ症な僕には、あんな筋肉ゴリゴリな人たちの中に放り込まれて、筋肉の品評会に参加させられるなんて……あぁ、考えただけでも鳥肌が立って胸もドキドキする。ササミ食べなきゃ……。
「お兄ちゃん大丈夫だから! 筋肉マンは自分にストイックだけど周りには優しい人ばかりだから! みんなお兄ちゃんの顔じゃなくて筋肉しか見ないって!」
「視線すら僕には怖いんだ‼︎ あぁ、叫んだら喉渇いた、プロテインプロテイン……」
「ほら! 水分補給がプロテインなんてお兄ちゃんは生粋の筋肉マンだよ‼︎」
「た、ただ味が好きなだけだよ……あれ? 鉄アレイマグカップないや。洗い物溜めたままだった……」
「ほぉら! マグカップが鉄アレイ! 人じゃないよ! 尋常ならざる領域に達してるんだよ‼︎」
「それは、マグカップがすぐに壊れるマッチョ……」
「ほらぁ! 語尾がマッチョだもん‼︎」
「く、クシャミみたいなもんだよマチョ……」
ど、どうしよう……どんなに負荷をかけようとも莉奈は決して諦めてくれない。
「お兄ちゃん、回想にも筋肉が侵食してるよ。もはや筋肉の神様もなるべき存在なんだよ!」
「僕は絶対に出ないから‼︎ だから諦めてくれよ……! パワー‼︎」
筋肉の神となりしマッチョ 杜侍音 @nekousagi
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