第20話 マリアの宝物
駄目だ、幾ら考えても持ってくる方法が浮かばない...詰んだ。
流石の俺でも王宮から盗んではこれねーよ!
そもそもマリアの嬢ちゃんは何でそこまでオルゴールに拘るんだ?
母親の形見だからだ、流石に他の物には出来んよな...あれ...そうだ...良い事思いついたぞ..
この間は好き放題言いやがって...マリアの嬢ちゃん泣かせてやるから覚えて置け!
大体俺もこんな所で、ブラザーなんてやってらんねーっての...
「1か月間の暇が欲しい? ブラザー見習い、リチャード何を言い出すのですか? まだ1週間ですよ」
「教皇様...私は尊女様の為にやりたい事ができました...すみません」
「ほう...尊女様の為ですか、解りました許可しましょう...それで何をするのでしょうか?」
「それは言えません」
この男、偶に「嬢ちゃん」と尊女様を呼び兄妹の様な感じに見える事があります。
崇拝するからこそ解ります。
この人間は決して尊女様に害成さないでしょうね...
「それじゃ、貴方の行動の評価は一か月後ですね、素晴らしい行いであれば評価しましょう...貴方が成りたがっている聖騎士にして差し上げましょう...ですが下らない事であれば、そうですね帝都の公衆トイレの掃除1か月です..宜しいですか?」
「それで良い...有難うございます、それで素晴らしい方だった場合は、手も貸してくれますか?」
「ええっ尊女様の為になる事なら幾らでも手を貸しますよ」
そして、俺は旅に出た...目指すはポートランド領だ!
まぁ、何処にいくのも顔パスだ。
まだ辞めたことは伝わってないらしいな。
領地につくと夜まで待った。
恐らく、俺の勘違いじゃなければ、こっちの方がオルゴールより良い筈だ。
流石に夜、此処に居るのは嫌だな...
せーの..嬢ちゃんの為ならえんやーこら...尊女様の為ならえんやーこーらっ...
さてと問題の物は回収したし帰ろう..ちゃんと埋め戻したからこれでバレないな。
とっとと帰ろう...怖ぇ~からな。
「教皇様、今帰りました!」
「随分と汚らしい姿で...それで、結局貴方は何をしたのですか?」
「これを持ってきました...」
「その骨がどうかしたのですか?」
「これは嬢ちゃんじゃ無かった...尊女様のお母さんの骨だ」
「母親のですか...」
「尊女様はロゼに片っ端から形見を奪われていてな、騎士だった俺はそれを見ている事しか出来なかった」
「ほう~ 尊女様の親の形見を略奪していたのですか?ポートランド家は」
「それで、尊女様は、最後に取られたオルゴールに拘りがあったみたいだが...俺には手は出せない、だから何でオルゴールが欲しいのか、そこから考えたんだ...多分親への愛情からだと俺は思った」
「成程」
「なら、本当に欲しいのは「母親」なんじゃないかと思って連れて来たんだ...此処には教皇様や大司教様に尊女様がいる...最高の墓がつくれるしな」
「信仰とは自分で考え、その為に何ができるか考え行動を起こす事です...素晴らしい、約束通り聖騎士の地位を私が授けましょう...そうですね、直ぐにでも教会の庭に素晴らしいお墓を作りましょう...今直ぐ墓石屋に作らせなさい」
「教皇様...流石に、もう夜ですよ」
「すぐに叩き起こせば良いのです...教皇の名前を出してよいから直ぐに作らせなさい」
「解りました」
夜中なのに叩き起こされて墓石屋は墓石を作らされた。
完成したのは明け方3時、そこから直ぐに教会に持っていき据え付けさせられた。
唯一良かったのは報酬が良かったのと教皇様からお言葉を頂けた事だ。
「嬢ちゃん、ちょっと教会迄きてくれないか?」
「どうしたのリチャード目に隈まで作って...」
「良いから、良いから俺からサプライズだ...」
無理やりリチャードに手を引っ張られて教会の裏に連れていかれた。
そこには、教皇とローアン司教が居た。
「朝から何でしょうか?」
「折角だからリチャード、貴方から説明したら如何ですかな?」
「まぁ、そのな...正直言ってオルゴールの話堪えたんだ...だからよ...これで許してくれ」
「これって...まさか」
「うん、お前のお母さん、フローリア様のお墓だ...ちゃんと骨を俺がとって来た」
「お母さまのお墓...本当に?....うわぁぁぁぁぁん...ありがとう...リチャード...本当にありがとう!」
「そうだな! 俺金が無いからな、この間の治療代と相殺にしてくれないか」
「解ったわ...ありがとう」
大体、何でも抱えすぎだって言うの...女でガキなんだから困ったら我慢しないで泣けば良いんだよ!
まぁ無理させていた大人がいけないんだがな...
リチャードはマリアの泣き顔を見ると安心したように笑顔を浮かべた。
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