最終話 剣聖ジェイク
「リチャード、先程の事といい、オルゴールの事といい礼を言わせて頂きます」
「そんな教皇様に頭を下げられると困ってしまいますよ」
「まさか、尊女様のお母様をお連れになるとは素晴らしい考えです...オルゴールの件も教えて頂き有難うございました」
「良いって、良いって!」
「これは約束の聖騎士の証です...たった今より 貴方は教皇直轄の尊女様つきの聖騎士です」
すげーなこれ、ミスリルの軽装に肩には教会の刻印が彫ってある。
「他のと違う気がしますが」
「それは特別な物です...それを身に着けていれば、私の権限の一部を行使できます...司教クラスに命令も下す事が可能です」
「凄いな!」
「はい、教会の刻印の入った物で...二つと無い大切な物です...聖戦で戦った大昔の本物の聖騎士の着ていた物から作りました」
「何故、そんな貴重な物を私に下さるのですか?」
「私も教会も貴方が尊女様の味方である、そう思い信頼をしました...そして貴方は私の直轄にしました...教えてください! 貴方は誰ですか?」
「俺はリチャード...皆が知っている名前だと「氷のリチャード」ですかね?」
「それは知っています! 氷のリチャードになる前の話を教えてください」
「なる前? 何だそれは」
「可笑しいんですよね...氷のリチャードは無口な事からついた字です...それなのに貴方はお喋りじゃないですか? まるで別人のようだ」
「人は何時までも同じ性格のまま居られない者です」
「そうですかね...ある司祭の話では、氷のリチャードは死んでいて葬儀まで上げたという話ですが可笑しいですね」
「興味深い話だな...」
「だけどおかしな事に、死んだ筈のリチャードが他の地域に現れて不思議な事に冒険者していた...そして、その時期に姿を消した男が居る」
「なんだ...全部知っているんじゃねーか!」
「知っていますよ、ですが「剣聖 ジェイク様」が何で正体を隠しているんでしょうね?」
「全部知っているんじゃねーか」
「知りませんよ? 正体を隠している訳まではね」
「それで、どうする? 聖騎士の話は無しか?」
「いえ、「剣聖様」も勇者絶対主義派では信仰の対象ですので、私は貴方の味方です」
「そうか? なら助かる...それでオルゴールの話だが教皇様はどうするんだ?」
「取り返してあげようかと思いますが...」
「それはそれで良いが...一つだけ言わせて貰うとこれは王国とマリアの話だ」
「そうですが結構酷い話です」
「だな、だがなもし「アリとドラゴン」が争ったらどっちに着くかという話し...」
「その話は尊女様がアリ、そう言う事ですか?」
「いや、マリアがドラゴンでアリが王国だ」
「何が言いたいのですか?」
「マリアが本気を出せば...王都何て滅ぼせる...そんな人間の為に力を貸すのか!」
「それはどういう事ですか」
「文字通り...マリアならたった一人で王都を滅ぼせる」
「確かに尊女様は強いですがそこ迄は...」
「出来る...そうだな! あの黒龍を見てどう思った?」
「何も」
「傷一つ付いて無かっただろう?」
「そう言えば」
「あれは空絶結界...剣聖時代に俺がつい教えてしまった物だ」
「確かに凄いですが、国相手に喧嘩出来るなんて可笑しすぎます」
「あの技の原理は張った結界の中の空気を全部抜く...そういう原理だ」
「それがどうかしましたか?...あっ」
「そうだ...マリアは王都や帝都全部に結界が張れる」
「それは」
「勿論、その中の空気を全部無くすことも可能だ...マリアを怒らせたら最後、帝都も王都も生活する者は全員窒息死だ」
「....」
「だから、オルゴールなんて簡単に取り戻せる...自分で取り戻せるのに手を貸す必要はあるのかな?」
「それでも私は...尊女様の為に手を貸したいと思います...心優しいドラゴンでアリに手を出さないなら誰かが払ってあげないと可哀想じゃないですか?」
「そうだな、教皇...俺もそう思うよ」
今日もマリアは診療所を続ける。
心優しいドラゴンは金貨1枚で奇跡の治療を続ける。
このドラゴンはこんなに嫌な思いをしても...人が好きだから。
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