第18話 ブラザー(修道士)


再び、ポートランドの騎士や兵士が帝都にきた。


さっき、尊女様と教皇様と揉めて立ち去った筈だ...入れて良い物か悩んだ。


だが、彼らはポートランド家の紋章を手に取っている。


良く見ると、それらの紋章は土で汚れていた。


「何があったんだ」


兵士は兎も角、騎士が仕えるべき家の紋章を外している。


本来はあり得ない。


「俺たちはもうポートランド家に仕えるのを辞める事にしたんだ...更に言うなら王国にも戻りたくはない! もう一度だけで良い帝都に入れて貰えないか?」



「待て、さっきはポートランドの騎士や兵士だから入れたんだ、辞めてしまうならそれは使えないな! とはいえ、さっきまで騎士や兵士だったんだ身分は確かだろう! 1人銅貨3枚で仮身分証明を発行する、3日間以内に、冒険者になるなり職につくか...」


「そうか、なら簡単だ、こっちを出せば銅貨3枚出さないで済むかな?」


「冒険者カード...なら銅貨は要らないな、帝都へようこそ! もう問題は起こさないでくれよ」


「解った」



運が良い事にポートランド家の騎士や兵士は冒険者崩れが多い。


此処に来た者は強行軍の為に屈強な者を選んだ。


その為、全員が冒険者カードを持っていた。





「何事ですか!」


「教皇様、ポートランドの騎士がこちらに来ています!」


「まさか血迷ったのですか? 直ぐに王都の騎士と警備団に連絡してこちらは聖騎士に」


「どうやら違うようです...教会の前に全員が跪いています」


「そうですか...跪いているなら、私が行くしかないでしょう」




「こんな夜更けに何事ですか? まだ尊女様に対して文句があるのでしょうか? 」


「いえ、違います! 私達は、今迄してきたことを尊女様に償いたいのです...その為に此処に来ました」


確かに紋章を外して手にしていますね...彼らなりには、罪の意識があるのでしょう!



「その様ですね...ですが私はまだ信じられませんよ...もし本気だと言うなら、その手に持っている紋章を投げ捨てて踏みつけてみてください」


ポールを先頭に全員が紋章を叩きつけ踏んだ。



彼らの本気が解りますね、あのポールと言う騎士とリチャードは「狂狼のポール」と「氷のリチャード」ポートランド家では1.2を争う有名な騎士です。


なら、マリア様と揉めそうなポートランド家から取り上げて置いた方が良いでしょう!


「本当に償いたいと言うのですね、ならば後は教会に任せなさい...ポートランド家にも文句は言わせません」


「有難うございます」


「それでは、教会で貴方達を見習いブラザー(修道士)として受け入れる事に致します! 日々の生活や住む場所は与えますからご安心を!」


「ちょっと待ってくれ教皇様、私達は騎士や兵士だ...ブラザー等」


「おや、貴方達はポートランドから逃げて教会を頼った、だからブラザーにして教会が保護した、これなら王だろうが誰も文句は言えませんね」


「あの教皇様...私は騎士であり、戦いの中でしか生きられません」


「そんな者はさっき紋章と一緒に捨ててしまった筈ですよ? 償うと言うならやはり見習い修道士から初めて女神様に懺悔をする事から始めるべきでは? 尊女様に償いたいなら、まずは朝早く起きてから診療所の前の掃除でもしては如何でしょうか?」


「ははは、仕方ないですよポール、私はそこから始めます...教皇様、頑張れば聖騎士にもなれますよね」


「はい」


「ですが..」


「おい、ポールっ マリア様に償いたいと言い出したのはお前だ ! マリア様は尊女様だぞ、償うというなら教会から始めるのは当たり前だろうがっ しかも教皇様が間に入ってポートランド家をどうにかしてくれる! ですがじゃねーんだよ...マリアの嬢ちゃん守りたいなら此処で聖騎士になるしかねーんだ」



「マリアの嬢ちゃん?」


「すみません、教皇様、気をつけます...それでどうするんだ!」


「ブラザーから頑張るよ」


「よし決まったな...お手数をお掛け致しますが、全員お世話になります」


「構いませんよ、貴族の横暴から保護するのも教会の務め...ただ貴方達はブラザー見習いですから明日はゆっくりして良いですが、明後日からは朝5時から起きて掃除やミサ、勉強が始まりますからね...頑張るのですよ!」


こうして、ポートランド家の騎士達は 見習いブラザーになってしまった。


思惑とは別に...






「診療所の前を掃いてくれているのねっ 何時もご苦労...どわああああああっ 何でポールとリチャードが掃除しているのよ!」



「昨日言われた事が堪えたんです...償いとして見習いブラザーから始めました」


「あのさぁ...いい歳したおじさんがそれで良いの?」


「はい」



「リチャードも」


「まぁマリアの嬢ちゃんを見捨てたんだから仕方ないな」



「相変わらず口が悪いのね!」


「ああ悪い尊女様...気をつける」




「まぁ、リチャードは怒られないならそれで良いわ...尊女様と呼ぶ姿は似合わないから」


「いや、教皇様に怒られるから気をつける」



騎士が仕えている者に逆らえないのは当たり前だわ。


これ以上いう必要は無い...


よくよく考えてみたら...ポールは隠れてお菓子をくれた事があったし、何も無くなってしまった私にリチャードは笹笛と笹船の作り方を教えてくれた。


少しは気に掛けてはくれていたのだろう。




「そうね、だったらこれからは尊女として私を敬いなさいな」



「「解りました」」


過去はもう良いわ


過去は変わらない、だから、もうそんなに気にもしてもない。


今の私はもう自由なんだからね...



「私をあの場所に戻そうとしない」それだけ気をつけてくれるなら、それで良い!


但し、それをするなら、今の私は何をするか解らない。


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