第17話 解散

惨めな者だな...


ポートランド騎士団、騎士団長なんて地位についているが言われた通り、俺は人形だ。


ポール様と皆が慕ってくれるが、騎士なんてギリギリ貴族でそんなに権力なんて無い。


仕官できなければ、それこそ平民に混じって冒険者でもするしか無いんだ。


俺だって! 俺だってなっ 間違っているのは解っているんだ。


マリア様が迫害されて居たのは知っていたさ...


オルゴールの話だって、学園の話だって知って居たさ。


昔の俺なら、そんな奴間違いなく殴っているさぁ。


だがな、俺には家族が居たんだ...俺が騎士を辞めたら家族が生きていけないんだ...


だから、首になるのが怖くて間に入れなかった。


騎士なんて碌な者じゃない!


騎士なんて所詮は仕える人間の犬だ。


エサも貰う為に飼い主に従うしか無い犬なんだよっ


良くもまぁ俺も「愚弄するな」なんて言えたもんだな。




無理に無理を重ねて禄に休みもせず強行軍で来たが、その結果がこれだ。



無理難題を吹っ掛けて挙句の果てに、お情けで治療までして貰った...情けねーな。



もう嫁さんも死んじまったし、ガキは家を出て行った...


どうせこのまま帰っても碌な事はねーしな。


「悪りぃ...団長も騎士団も辞めるわぁ 後はお前に任せる!」


「団長、本当に辞めるんですか...冗談ですよね」



「さっき、マリア様と話してみてよ良く解った...こんなの騎士でもなんでもねーよ! マリア様は人形って言っていたけどよ、犬ころだぜ!」


「それで、団長はどうされるのですか?」


「マリア様に言いにいくのが筋だが、流石に言いにくいからなっ 教会にでも相談するさっ 要らないと言われたら冒険者にでもなれば良い」


「ポール様は本当に辞めてしまうのですね! なら決めました、私も辞めましょう」


「おいっ副官のお前迄居なくなっちゃ駄目だろう」


「ポール、貴方は今騎士団を辞めたのですから、僕が騎士団の団長です! だから僕の自由の筈です....ねぇポール」


「くそっリチャード覚えていろよ...それでどうするんだ、お前は?」


「ポールについて行きますよ? 貴方脳筋で馬鹿ですからねどうせ教会との交渉なんて出来ないですよね? 幸い僕は元から独身ですからなぁーにもしがらみはありません」


「ほう、ついて来てくれるのか?」


「大体ポールが辞めた時点で僕たちには未来なんてないんですよ? 騎士団長がマリア様についたのが解ったら、とばっちりは僕たちに来ますよ?公爵は兎も角あの糞婆は絶対に咎めてきますよ? 場合によっては処刑なんて事もやりかねない! だから貴方は脳筋なんですよ」



「おい...お前そんな奴だったっけ」



「ポートランドじゃ猫の3匹も被らなくちゃ危なくて騎士なんて出来ません、横暴な婆にクソガキのロゼ、しいて言えば、公爵がまだ真面ですが、糞婆に悪ガキの言いなり...皆、仕事と割り切ってしているんですよ? 解りますか?」



「解るな」


「まぁ僕は、貴方に恩義があるから居るだけでしたから、ポールが居なくなるなら辞めちゃいます」


「仕方ないな、俺はもう騎士団長じゃない」


「そうですね、僕ももう騎士団長じゃない...そうだスミス、お前が今日から騎士団長だ良かったな!」



「冗談じゃない...帰ったら八つ裂きにされるだけじゃ無いですか? それに思ったんですよ! 俺は言われっぱなしは好きじゃない...マリア様に時間は掛るだろうが、オルゴールの分と学園の分、叩き返してやります...「これでチャラだ」そういう仕事をしてやりますよ...だから辞めてしまうのでやりません」



「それじゃローランド?」


「はぁ? 今考えていたんですよ、一旦帰ってからオルゴール盗んでこようかって...ですがロゼお嬢様が王宮に持っていってますから無理ですねっ 私も辞めますよ...だれが貧乏くじなんて引くもんですか!」



「結局全員が辞めるのか!」


「そう言うことですね」


「それじゃ...せーの!」



空高く、百合と剣の紋章が飛んだ...地面に落ちた紋章を誰も拾わなかった。


この紋章はまるでこれからのポートランド家の未来を物語っているようにポールには思えた。


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