第15話 銀貨1枚
「尊女」という地位を貰いはしたが、私の周りは何も変わりはしなかった。
しいて言えばあの後、騎士団の団長さんと帝都警備団の署長さんが挨拶にしにきた位。
最近では、教皇に間に入って頂き、他の診療所とも提携する事にした。
私も今は、聖女で無いから教皇様と呼ぼうとしたが、露骨に嫌な顔をされて「尊女様」なのですから、教皇から「様」はやめて下さい」と言われてしまった。
「名前で敬称無しで呼んで欲しい」と言われたが、流石に出来ないので教皇と呼ぶ事にした。
その流れで、ルドルフ三世を「帝王」ローアン大司教は大司教は沢山居る為「ローアン」と呼ぶ事になってしまった。
私が「ローアン」って呼ぶと教皇や帝王が羨ましそうに見ているのだけど...ちょっと辞めて欲しい。
それで、診療所との提携方法は「紹介して貰えたら銀貨1枚払う」そういう感じにして貰った。
これは教皇としっかりと話し合い、「自分が出来ない仕事を私に回しやすくする為」の手段でもある。
今迄は、出来ない治療もお金の為に無理やり施術して患者を死なせてしまうケースが多くあった。
だが、「自分で出来ない治療を紹介してお金が貰える」のであれば紹介するのではないか?
そういう考えからだ。
治療師はプライドが高い人が多いから難しいと思ったのだけど...
「尊女様に困った時に患者を回せるなら凄く助かります」
と感謝された。
ここでも、「尊女」という地位が役にたった。
最も診療所の管轄は教会だし、教皇が「お願い」したのだから断る事はできない...そんな気がする。
ちなみに金貨1枚払えない人の場合は、教会がお金を貸すそうだから安心。
金貨1枚という金額は丁度良い気がする....
確かに大金ではあるけど、普通の人でも死ぬ気で頑張れば稼げない金額じゃない。
ちょっとした病気や怪我なら、金貨1枚なんて払いたくないから普通の治療院に行くから、他の治療師から仕事を奪わないで済むし。
「ふぁ~あ...今日は暇ね」
私が暇と言う事は大病や大怪我をした人が居ないという事だから良い事だわ。
結界のお金が1日金貨1枚貰えるから、お金に困る事も全く無いから言える事だわね。
私がゆっくり休んでいると...けたたましくドアが叩かれた。
傷だらけの騎士が転がる様に入ってきた。
「聖女様! たた助けて下さい!」
「解りました...とりあえずパーフェクトヒール! これで貴方は大丈夫だわ!」
尊女でなく聖女...何があったのかしら?
「聖女様、感謝します...ですが、外にも沢山同じような者が居ます!」
「解ったわ!」
外に飛び出すように出て私が見た物は...傷ついた沢山の騎士や兵士だった。
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