第11話 水霊の儀中止

実力に見合わない者が無理やり「聖女」になるからこういう事になるのだ...


本当に馬鹿ばかしい。


王国の結界の維持をするだけで寝込んでしまう。


聖女の義務である、治療行為を一切行わない。


そんな人間が聖女である事事態がおこがましい。


本来であれば、各国の要人等で一般の治療師では治せない病気や怪我を治すのも聖女のお勤めだ。


それがあるからこそ「聖女」を有する国は尊敬される。


だが、ロゼが聖女である以上そのお勤めも果たされない。


もはや王国は「聖女の保有国では無い」各国の見解ではそうなっている。


特に自国の王子が難病に掛かり助けを求めたが「出来ない」と答えられた南国では教皇である私に「聖女の称号剥奪」の願い出があった。


ただ、ロゼは実力こそ最低だが、マリア様から「職種(ジョブ)」は正式に貰っている。


恐らく、記録水晶で確認しても職種に聖女と出るだろう。


故に偽物では無いのだ...


幾ら、偽物では無いにしろ、「実力0」のロゼを聖女と認める国は殆ど無いと言える。


だから、水霊の儀も取りやめても問題はない。


これ程の世界的な儀式を「場所を変えてくれ」そういう王国...儀式的にも成立していない。


やりたくない王国に参加したくない国々、なら簡単だ。


止めてしまえば良い...それだけの事。






「「水霊の儀」は取りやめた方が良いでしょう!」



教皇アルフド6世が態々王宮迄足を運んでくれた。


その際にロゼの様子を見て慈悲を下さった!本当にありがたかった...


「有難うございます! 本当に有難うございます! 教皇様!」


「良いのですよ...フリード王子、貴方やロゼの道は棘の道です!ですが女神様は必ず見ています頑張りなさい!」


「はい、有難うございます!」



最早、どんなに頑張っても棘の道しかないでしょうが...



「教皇さ.ま.あ.り.が.と.う.ございます...」


「ロゼ様も気をしっかり持って頑張って下さいね! そうだ、今後の行事は私の一存で執り行う事が困難だと諸国の王に伝える事にしましょう...その方が宜しいのでは無いですか?」


「本当に申し訳ございません...教皇様にはお手数をお掛け致します」


「良いのですよ!」



馬鹿な事だ、聖女の祭事の義務を捨てれば求心力が無くなる事も解らない。


最もこの分では本当に行う事も出来ませんね...




「教皇様、この度は息子の不始末の為にお骨おり頂き申し訳ありませんでした!」


「別に構いません...これから王国は大変な事になるでしょうが気を落とさず頑張って下さい」


「本当に申し訳ございませんでした」


「王も王妃も、もう頭を下げる必要はありませんよ、私が出来るのはこの位しかありませんからね...それでは失礼いたします」


教皇は済まなそうな顔で王宮を立ち去った。



貴重な「本物の聖女」を王国は失った。


聖女が居たからこそ、全ての国が王国に配慮をしていた。


最早、王国に配慮する国は無くなる。


恐らくは、これから世界の国々は「王国」でなく「帝国」に配慮するだろう。



勿論、私の気持ちも既に王国には無い。


私は教皇...女神に仕える者、偽物ではなく本物の傍に居たいと思うのは当たり前だ..



「教皇様、良かったのですか?」


「もう、あそこに居るのは聖女ではない、もう会う事も無いでしょう?」


「ですが、聖女の称号はあるにはあるんですよね!」


「ええっ、正式に譲られていますから記録水晶にも聖女と出ると思いますよ! ですが壊れた聖女にだれが跪くのですか?」


「壊れた聖女!」


「良いですか? 水霊の儀に何故各国の王が態々集まるか解りますか?」


「それは神事だからでは無いですか?」


「それは半分合っていますが、半分合っていません!良いですか?何かあった時に聖女にお願いできるように顔見せの意味が実は大きいのです!」


「顔見世ですか?」


「はい、例えば、王や王族が病に掛かり困った時や、流行り病が起きて国が大変な時に「聖女」を招いて助けて貰う必要があります! その時に助けて貰えるように王族が顔を売る場所、それが半分です」



「それでしたら!」



「解りましたか? 生きていくのが精一杯で、人を助けることが出来ない「聖女」に頭を下げる王族は居ない!そういう事なのです! 実際に私が王達に言う事はありません! 続々と各国の王族から参加拒否の連絡が来ています...そして私も態々参加するつもりはありません!」



「それでは!やはり」


「私は今も昔も「聖女はマリア様」そこはブレません! 何しろあの方は歴代の聖女様でも取得困難な「パーフェクトヒール」が使えるのです...今はローアンに任せておりますが、直ぐに私も帝国に向うつもりです...聖女を越える「偉大なる尊女様」が居るのですから教皇が傍に居るのは当たり前ではありませんか?」


「そうですね! 教皇様が帝国に行く際には私も同行させてください」


「一考しましょう」


「宜しくお願い致します」



こうして教会の活動も王国から帝国へと中心が移りつつあった。



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