第10話 新しい称号
「なかなか難しい物だな...聖女を上回る様な称号、幾ら考えても思いつかんな」
帝王 ルドルフ三世は「称号」について悩んでいた。
今迄、帝国シルベスタは豊かで力はある物の他の国より下に見られる事が多かった。
その理由の一つには4職(勇者、聖女、賢者、剣聖)がこの国から出た事が無く、居ついてくれた事が無かったからだ。
だが、奇跡的にも王国と仲違いして「聖女マリア」がこの国に来て診療所を開いてくれた。
これで、他国から「野蛮な国」と言われないで済む。
この国が幾ら欲しても手に入らなかった物をこの聖女が与えてくれた。
そう考えたら、この聖女には「望む物を何でも褒美として差し出しても良い」そう思っていた。
だが、調べさせて見るとこのマリアという聖女は「自由を好み束縛を嫌う」ようだ。
ならば、地位を与え、この国の困り事を相談して後は自由にして貰えば良い。
聖女の力を持つ者がこの国に居てくれる...それだけでありがたいのだ。
だが、この国の学者や有識者に過去に「聖女」を上回る称号を得た女性が居たかどうか調べさせたが、結果は「解らない」という事だった。
確かに「勇者」「聖女」「賢者」は三職、女神の御使いと呼ばれる職種だ。
これを越える、称号等、考えがつかない、勇者であれば「ドラゴンズスレイヤー」等他にも武勇を現す称号はある。
一層の事「奇跡の癒し手」という称号でも作ろうかと思ったが、元聖女である以上は教会にも相談をした方が良いだろう。
これは私だけではなく教皇様にも相談する必要がある。
マリアの称号について通信水晶を使い、教皇アルフド6世様に相談をした。
本来は通信水晶は、有事にしか使えない、だが通信水晶で連絡しても「聖女」絡みなのだから問題は無い筈だ。
アルフド6世様も同じ認識だったようで何も問題は無かった。
「称号ですか?」
「はい、折角、帝国にマリア様が来て下さったのですが、「聖女」という言葉を嫌うご様子でしたので」
「仕方ない事です、私の聞いた話ではマリア様にとって「聖女」は嫌な思い出しかない様ですからね...それで私の方でも実は、その事を考えていたのです」
「教皇様もですか?」
良かった、これで帝国が独自に与えたのではなく、教会から正式に頂いた称号になる。
「はい! それで、聖女と同等以上の称号を教会で与えた事は無いか考えた所、「聖 」「 聖者 」「 聖人君子 」「尊者 」「 聖人 」 が過去にありましたがどうもしっくりきません」
「確かにどれも男性が貰う称号の様な気がしますな」
今一しっくりしない、折角なのだから聞こえの良い称号が好ましい。
「はい、そこで大司教や司祭と話し合った末、尊者が「ひときわ神聖な人」「尊敬できる人」という意味でしたので、「尊女」にする事にしたのです、「ひときわ神聖な女性」「尊敬できる女性」ならマリア様に相応しいと思いませんか?」
「それは本当に素晴らしい称号です...それでその称号は何時お与えになるのですか?」
「本来なら私が行って直ぐに与えたいのですが、王国のまぁ、役立たずとはいえ「聖女」を継いだ者が居るので、いけませんね...本当に口惜しいのですが、そちらに居るローアンと帝王の方で授けて下さい!」
「本当に大変ですな」
「はい、教皇なのに「本物の聖女」の傍に居られなくてあんな...すいません口が滑りました...忘れて下さい」
教会のそれも教皇自らがマリアが本物の聖女そう考えている。
これは王国に対しても優位性がある、実に好ましい事だ。
「聞かなかった事に致します...お気持ちが凄く解ります」
「助かります...マリア様は教会にとっても大切な方なのでくれぐれもお願い致します!」
こうしてマリアの思惑に反して「尊女」の地位をマリアが授かる事が決まってしまった。
(解説) 聖女様 聖女 マリア様 マリアと呼び方が変わる事について。
聖女様 聖女 マリア様 マリアと呼び方が変わる事について。
これは、政治的な意味と信仰の意味の差で生じています。
信仰
女神→ 4職(勇者 聖女 賢者 剣聖)→教皇→王
4職は「女神の使い」とされているので形上は教皇より上になります。
ですが、
政治上は
女神(滅多に降臨や神託はないので除外)
教皇(この世界は宗教の力が強い)→王→4職
となります。
その為、「様」がついたり無かったりしています。
まして、マリアは「聖女を辞めた」ので周りの呼び方も安定していません。
その為です。
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