第4話 不幸の始まり
「何よ! 何も起こらないじゃない!」
散々脅されていたのに、何も起こらない。
確かに、優秀な聖女を私達のせいで失ったから、その意趣返しで脅されたのかも知れない。
ロゼはそう思う様になっていた。
子供が作れないのは悲しいが、それ以外は決して悪い生活じゃないわ。
貞操帯は装着されている物のフリード様と楽しく過ごせているし、寝る時もベッドこそ別だが同じ部屋で過ごす事さえ許して貰える。
実質、普通に王家に嫁いだのと何も変わらないじゃない!
本当に警戒して損したわ。
食事は実家の物と比べても更に豪華だし、欲しいと思う物は大体が言う前に用意されている。
多分、この生活は死ぬまで許されるに違いない。
私は聖女、だからこその待遇だわ。
「子供が作れない」「フリード様が王太子から落とされ王子になった」この二つを除くなら最高の生活かも知れないわ。
よく考えたら、私は子育てに向いて無さそうだし、王妃になって大変な仕事をするよりは、王族の末席に座って、聖女としての待遇を受けていた方が幸せかも知れないわ。
今の生活をロゼが受け入れた頃、またしても侍女達が流れ込んできた。
「これは何事ですか!」
ロゼの頭に嫌な予感が走った。
侍女たち絡みでは碌な事が無い。
侍女たちは箱に入った大量のポ―ションを運び込んでいた。
「王妃様に言われましてポーションを運んできました」
「ポーション? それは解りますが、この数は何ですか? まるで治療院みたいじゃ無いですか!」
「私も解りませんが、運ぶように言われて持って参りました、きっと王妃様には何か考えがあっての事かと思います」
「そう!解ったわ」
体からまるで生気が抜かれて行くように力が無くなっていく。
ようやく意味が解ったわ。
今日で3日目。
魔力が枯渇していく...この国の結界を維持する為の魔力が全部私から抜け出ていく。
ポーションを飲んでも飲んでも片っ端から魔力が抜けていく。
まるで穴が空いた壺になったように魔力の補充が間に合わない。
体はまるで重しを付けられたように重い。
歩こうとしたら、まるで沼の中を歩いているかのように進めない。
良く姉が体調を悪そうにしていたが、良く体調不良で済んでいたものだ...私は禄に歩く事も出来ない。
仕方なくそのままポーションをひたすら飲み続けながら寝ていた。
ポーションを飲まないと、直ぐに魔力が枯渇して意識が無くなる。
外出から帰られたフリード様が真っ青な顔で私を見ていた。
急に真顔になられて...私に話しかけてきた。
「ロゼ、おいロゼどうしたんだ!」
凄く心配そうな顔をしているわ...心配をかけたみたいね..
「体から魔力が抜けていくんです...ポーションを飲んでも間に合いません」
それだけを何とか伝えた。
「今直ぐ母上に聴いてくる待っていろ」
急に険しい顔になるとフリード様は走って部屋から出て行ってしまった。
◆◆◆
俺は走って王妃の元に向った。
そしてノックもせずにドアを開けた。
「何事ですか!」
「ロゼが動けなくなったんです」
多分、母上はこうなるのを知っていたんだな。
顔色一つ変わっていない。
「そう! 恐らく魔力の枯渇ね! 知っていた? マリアの魔力は通常の200倍以上あったのよ、それが「聖女」に選んだ理由なのよ? 普通の子が引き継いだらそうなるわ? ポーションを飲んで出来るだけ静かに生活する、それしかないわ」
嘘だろう! それじゃ、ロゼはこのまま寝たきりで過ごさなくてはならないのか...
「ではロゼはこれから寝たきりに近い生活をしなくてはいけないのですか?」
母上の事だきっと何か対応策がある筈だ。
「そう言う事になるわ...まぁポーションを飲んでいれば命は別状ないから我慢する事ね」
そんな、何も改善策は無いのか!ロゼは一生こんな生活を送る事になるなるのか。
「そんなロゼは一生寝たきりになるのか?」
「そうね、次の聖女候補を探して1人前になれば交代できる...必死に探してみるしかないわ」
そんな方法...それこそ、大きな川で一粒の砂金を見つける位難しいじゃないか、実質出来ないだろう。
「マリアに詫びて戻って貰う」
「それは無理! あの子は「聖女」になりたくなかった。勿論王妃にも興味が無い...聖女になりたくないから子供を産めない立場なのに王太子との結婚を望んだ! 私や王はどうしてもマリアを聖女にしたいから、あり得ない条件を飲んで、聖女にした。それだけだわ」
「では」
「そうよ、条件をこちらから反故にしたから、「嫌な聖女」を辞めて隣国に行ってしまったのよ! だけどね、彼女はもう何年も「聖女」として結界を張り義務も果たしていた...貴方を与えないなら「無料(ただ)働きさせた事」になる、結局無料働きさせていたのだから無理ね...王が隣国迄馬車を出したのも、お金を渡したのも、その見返りよ...これで貸し借りは無し、帰ってきて貰える理屈は無いわ」
「そうですね...」
怒り心頭の母上とこれ以上話しても無駄だ。
ただ、謝り立ち去る事しか出来なかった。
だが、これですら不幸の始まりでしかない事を俺は知らなかったんだ。
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