這い寄る影
文月 和奏
寄り添う影
さて、今日も夜の散歩。
帰ったらビール片手に、推し活動するぞ!
今日も私は日課の散歩である、身体の事を考えて毎日欠かさず公園で歩いている。
【痴漢に注意!】
普段は気にならないのだけど、今日はなぜか気になって注意書きの看板を見る。
「まさかね。この数年痴漢なんて見たことないし」
うん? これでも私は社内では……なはずだ。
聞きとれないって? 気のせいきのせい。
私は頭を左右に振り、今考えたことを頭から追い出し、いつもより早く帰るため足取りを早める。
数分歩いて異変に気付く。
ずっと私の後を追いかけてくる何かの気配を感じるのだ。
それは気配を隠すこともせず、私の背後にずっと……ねっとりと後を付けてくるのだ。
えっ、ちょっと。いくらなんでも大胆過ぎない!?
こういう時、振り向てはいけない、なんとかして撒くしかない。
先ほどより歩く速さを早める。
……けれど、何かはずっと私の後ろにぴったりとついてくる。
立ち止まるとそれも一緒に止まるのである。
私は振り切れないそれに、恐怖を抱き胸の鼓動がどんどんと早くなる。
だめだ……振り切れない。
どうしよう……携帯で警察呼ぶ? あるいは大声を出すとか?
辺りを見回すが人っ子一人見当たらないのである。
あぁ、これはつんだわぁ……
よし、最後の手段走って逃げるしかない!
こう見えて学生時代、私は陸上部だったのだ、足の速さには自信がある。
……っ。
私は無我夢中で走った……後ろを振り返ることも無く。
肺が苦しくても足を一歩、また一歩と進めて走る。
ビニールの中のおつまみやビールが荒るのも気にせず。
「……はぁ、っはぁ…‥流石に撒いたよね……? ……!?」
いや、まだいる。それは息を荒くする素振りも見せず平然と私の背後にいる。
お母さん私はここで……
諦めかけたその時、それは私へと牙を向いた。
「にゃ~ん!」
――そう犯人は猫だったのである。
「私……昔から猫は苦手なんだよ!」
這い寄る影 文月 和奏 @fumitukiwakana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます