たまには二人で

水城みつは

捜し物

 この世界ゲームは夜中でもそれなりに明るい。

複数ある月と、エーテルによる発光現象によるものとされている。

もっとも、真っ暗だとゲームにならないという理由もあるのだろう。


 僕はこの世界ゲームの夜が好きだ。

スキルを駆使し、屋根伝いに月を見ながら一人散歩するのだ。

「【軽量化】、【浮遊】」

軽く地面を蹴って屋根の上へと駆け上がる。


「……」

屋根の上で隣の建物との間に埋まっている騎士と目が合った。

「こんばんは、良い夜ですね」

彼女はそう言った。

いや、目が合ったという表現は正しくないだろう。

彼女の首から上は何もなかったのだから。


「で、どうしてこんなところに埋まっていたんですか?」

彼女を引っ張り出して尋ねた。

「グリフォンをテイムしようとバトってたら逆に捕まって、空からここに落とされたんですよ」

存在しない頭の位置から声が聞こえるのは不思議な感覚だ。彼女の種族は首なし騎士デュラハンらしい。

「まさか、壁に埋まって動けなくなるとは思いませんでした。これってバグですよね」

これだけリアルな世界で壁抜けのバグがあるとは思ってもいなかった。流石αバージョン。

首なし騎士デュラハンの方と初めて会いましたけど、この世界の首なし騎士デュラハンは首を持っていないデザインなんですね」


「あ……」


頭はないけど、引きつった顔が浮かぶような声がした。

「あたまー! 私のあたま、どこいった?」

どうやらグリフォンは頭をどこか別の所に落としたようだ。


「一緒に探していただけませんでしょうか……」

せっかくなので彼女の頭を探す事にした。

大雑把には頭のある方向がわかるらしい。


狭い路地を抜けたり、軽くバトったり、夜通し街を歩き回って頭を見つけた。

たまにはこんな散歩も悪くない。



―― Ver.0.202.34α リリースノート

  * 一部種族(別表)で、頭部等の当たり判定が残っていたのを修正。

  * 一部種族(別表)で、付属物が一定以上離れた状態にならないように修正。




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たまには二人で 水城みつは @mituha

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