解決編
いつものように立花雅人が謎解きを始める。
「まず空き巣の仲間割れのセンはないね。あんな下り坂での運転中に運転席にいる人間を刺してしまえば間違いなく事故が起こる。また停車中に揉めたというのも考えづらい。エンストで動けなくなったのだとしてもあんな狭い坂の途中で停車していては邪魔だし目立つ。深夜とはいえ通行人の印象に残る事は避けたいし、もしも以前から相手に殺意を持っていたとしてもその状況であればいがみ合う事よりもまず車を動かす事を優先するね」
「そもそも狭い車内で相手の胸を刺すというのはかなり難しいんだ。もちろん不可能ではないが考えづらい。つまり殺害現場は車内ではないと見ていいだろう」
「先に犯人を指摘しておこう。犯人は自宅で殺した死体をどこかへ遺棄しようとして車へ乗せたんだ。もちろん運転席に死体を座らせる理由なんてない、その車は左ハンドルだったんだ。犯人はその車に死体を乗せるために自宅のドアのすぐ横に車を横付けした。つまり犯人は助手席側のドアに一番近い家の住人だよ」
「だったら死体はどこへ消えたんだ」
「目撃者は勘違いをしていたんだ。一度目に見た車と二度目に見た車は別の物だったんだよ。最初に死体の乗っていた車Aは犯人の物である左ハンドルの車、戻ってきた時に調べた車Bは盗難車で右ハンドル。暗かった事もあっただろうし、何より先ほど轢かれかけたせいで強烈に印象に残っていた盗難車と同じ車いう先入観があっても不思議ではないよ」
「そしてその殺人事件とは全く関係なく盗難車に乗った空き巣が坂の上で犯行を終え、道を塞ぐように止まっていた車Aに追突してしまう。サイドブレーキをかけていなかった車はその勢いのまま坂の下にある川へドボンだ。そしてその衝撃で車Bはエンストしてしまう。車のぶつかる音が周辺住民に聞かれたかも知れない。事実、死体を捨てにいこうとした殺人犯はその音に気づいただろうね。泣く泣く空き巣は戦利品を持てるだけ持ち車を乗り捨てて逃げた。まさにビリヤードさながらの玉突き事故だね。川の底を浚えばあの日目撃した車Aとと死体が見つかるはずだよ」
死体の逃げる夜に 松丘 凪沙 @nagisamatsuoka
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