Ch.15 地図
道中で曹永賀は向経年の手の力が強すぎて頭が落とされそうになったとずっと文句を言った。
向経年は曹永賀の苦情に相手するのが面倒くさかった。彼は譚雁光をちらりと見て、相手がこちらを注意していないことに気づき、なぜか安心した。それでどうしてこの反応があったのがわからなかった。おそらく他の優秀の同性の前に恥かきたくないからと思い、この件をほったらかした。
三人ともどこから探せばいいのかわからなかったので、村長の事務所に足を運んで運試ししてみた。
幸いなことに、陳培安はたまたまそこにいた。
「向さん」陳培安は彼らの訪問に少し驚いた様子で挨拶した。
来た目的を簡単に説明してから、シフト表を取り出して尋ねた。
陳培安はその紙を受け取り、「向さん、どうしてこれを知りたいですか?」と少し混乱しそうだった。
向経年は一瞬言葉が詰まり、急いでごまかした。「陳さん、次の船便まであと十日を待つのはあまりにも長すぎるので、港で助けてくれる人がいないかと探してみたいだけです。本島に連れて行ってくれる通り過ぎる船があるかどうかを確認したいだけです」
陳培安はまだ彼らを少し疑いの目で見ていた。
「陳さん、困らせたいわけではないが」その時、譚雁光は突然に話を割り込んできて、いつもと違って落ち着いた真剣な口調で言った。「ただ、僕たちも本島で先延ばしできない仕事があります。予想外事故のせいで進捗が遅れてしまいます。でも僕たちの船はしばらく修理できないので、他の方法を考えるしかないです」
「チャンスがあるかもしれないから聞いてみたいだけです。陳さん、別に無理をする必要がないです」
譚雁光が真剣な顔をする時、融通が利かない人のように見える。彼自身の御曹司のオーラと相まって、ブラフをかけているように、「僕の何十万のビジネスが台無しになったら弁償できるのか?」と言っているようだった。
陳培安は明らかに脅されたようにびっくりしており、譚雁光の次の言葉を待たずに急いで説明した。「大丈夫、大丈夫、別にしつこく聞くつもりはありません。埠頭の現担当の資料を探しますね。少し待ってください」
譚雁光は頷き、低い声でお礼を言った。
陳培安は急いで立ち上がり、資料を調べた。
向経年は陳培安が振り返った時、譚雁光がそっと息は吐いたことに気づき、驚いた目で彼をしげしげと見た。
譚雁光は彼の目が気になって、困ったような眼差しを見つめ返した。
「これ、これ」陳培安は親切に資料を譚雁光に渡した。「埠頭の現担当はこの方、
「僕は譚です。」譚雁光は遠慮がちな様子で頷いた。
「譚さん」陳培安は不安そうに微笑んだ、「彼の住所を教えますので、聞いてみてください。このシフト表はおそらく昔のものだと思います。昔だけこんなシフトを組む必要がありました」
譚雁光は資料を受け取った。「昔?どうして昔は日勤が必要でしたか?今はどうして要らないですか?」
陳培安は質問に驚いて一瞬ぼんやりし、躊躇していた。「え、えっと、僕もよくわかりませんが、昔は船便が多かったかもしれません」
彼の姿を見る限り、おそらく事情がわかっていないと思い、譚雁光はこれ以上質問しなかった。
「どころで、陳さん、地図を貸していただけますか?地図がなければ、住所があっても道がわかりませんよ」話が終わったところ、向経年はこの隙間を狙い、地図を求めた。
「あ、そうだ、そうだ!前に頼まれましたよね!すっかり忘れてしまいました。僕の記憶力はやばいですね」陳培安は自分の額を軽く叩いてため息をつき、引き出しから地図を取り出して向経年に手渡した。「持っていってください。返さなくていいですよ」
「陳さん、ありがとうございます」
その後しばらく雑談を交わしてから、サヨナラの挨拶をした。
事務所を出た後、譚雁光は頭を振り向いて何か言おうとした時、向経年の手が寄ってきた。
「すごいね、雁光」向経年は譚雁光の肩を数回強く叩いてから身を寄せて、「よくできているね!」
「雁光兄、さっきは本当に扱いにくそうな人って感じだよ」曹永賀も身を乗り出して「すごい」と親指を上げた。
「……」譚雁光は曹永賀が褒めているのかバカにしているのかわからなかった。ただ、隣の熱源と肩を握っている手の存在感が高すぎると感じていた。彼は肩を動かして相手に手放してほしいという合図を出したが、手の持ち主は何の理由があったよう、もしくはただキャッチしていないようで、ずっと握り続けていた。
譚雁光は唇を巻き込み、急いで話題を変えた。「早く地図を見てみましょう」
「見せて」その言葉を聞き、向経年は手を離し、体を横にして地図を広げた。
譚雁光は静かに安堵のため息をついた。
「————ちょっと待って、この地図は違う」向経年は地図を広げるとすぐに何かがおかしいことに気づいた。
「何?」曹永賀は困惑した。「陳さんは取り違えた?」
「いいえ」向経年は頭を振りながら、地図を二人に見せた。「この地図は破れている」
#
向経年たち三人は、道路脇の木の下にしゃがみこんで、地図について考え込んだ。
地図は四つ折りほどのフルページサイズだった。しかし、地図の三分の一が引き裂かれ、そして紙くずで無理やり繋ぎ合わされたみたいに、三分の二しか見えなかった。
「この地図はどうしたの?」曹永賀は繋ぎ合わされた部分を手に取ってチェックし、「本当に紙くずでくっついている!」と言った。
「紙くずはどうでもいい。残りの部分が重要だ」向経年は引きちぎられたところに指差した。「この地図はわざとこのように引き裂かれていた」
「わざと?」
「残りの部分をゆっくり見て、全て繁華街の東側だ、繁華街の西側に沿って意図的引き裂いたんだ」
譚雁光はその言葉を聞いた後、頭を下げて注意深く観察した。確かに向経年の言う通りに繁華街の西側に沿って引き裂かれたものだ。島全体は半分しか残っておらず、引き裂き線は曲がりくねっており、明らかに慎重にちぎったようだった。
「どうして……そんなことしますか?」譚雁光は思わず口を開いた
向経年は首を横に振った。「わかんない」
「えええ、誰かわざと裂いたということ?」曹永賀の脳はまたキャパオーバーした、「でも陳さん何も言わなかったよね」
「何も言わなかったからこそおかしい」向経年は言った、「彼はこの地図がとても正常であると思ってることだから」
「つまり、この島の人は東側にしか活動していないということ?」曹永賀は尋ねた。「そうでないと、なぜ地図の半分しか使わない?」
「繁華街の西側に行ったことありますか?」譚雁光は頭を上げて二人に尋ねた。
向経年と曹永賀は顔を見合わせ、一緒に首を横に振った。「俺たちはずっと砂浜の辺に行ったり来たりしていたから、繁華街にあまり長く留まらなかった」と向経年が言った。
「今朝埠頭に行く途中、繁華街を通り過ぎたときに遠くから見ただけです」譚雁光は言った。「後ろに森があるみたいです。微かに見えました」
「なんで話せば話すほど怖くなってきてる?」曹永和は思わず腕をこすった。
「これがホラー映画の始まりじゃないよね…ただタイムスリップしたよね?」
「この島は何かがおかしい」向経年はため息をつき、直接に地べたに座った。「聞いたことのない島、変な船便、シフト表、そしてこの地図……おかしいところが多すぎる」
曹永賀は泣きそうになった。「向兄、やめてよ。ますます怖くなってきたけど」
「実は……ずっと不思議に思っていることがもう一件あります」譚雁光は躊躇いがちに言い、二人ともこちらに目を向けたのを見て、少し止まった後再び口を開いた。「どうして警察は僕たちのところに来なかったですか?」と尋ねた。
その場にいた全員が一斉に静かになった。
場が凍ることを恐れるかのように、譚雁光は速いスピードで喋った。「船の事故があったら、公的機関が対処するのが一般的ですよね?しかし、最初から最後まで、僕たちの前に村長と陳さんしか現れなかった。民国五十年(西暦一九六一年)とはいえ、警察が引き継ぐべきでしょうね……もしかして、この島には警察がいないですか?」
沈黙————
向経年はハッと息を呑み、自分を落ち着かせた。
曹永賀は落ち着くことができず、お母さんーーと泣きながら叫んだ。
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