想定外でした……。


(え?いや、勘違いも甚だしいかもしれませんが……こ、告白?!ここここここここ、こくはくぅ?!いや、でも。アンラッキーセブンの日だってわかってるのに告白、しますか?……て事は、ですよ?)


 奈々未は必死に考える。


(アンラッキーだとすると、告白は成功しないです。でも、私が断るはずはないです。ましてや……それですと、穂村ほのむら君のアンラッキーにはなりません。残るは……私が穂村君を好きな事を知っていて断るか私に告白した後に穂村君が幻滅して……!!)


 奈々未は愕然とした。

 足が震えてくる。

 突然の終わりが、やって来ようとしている。


朧月おぼろづき、さん。あ、あのさ」

「はい……です」

「僕……ずっと前から、朧月さんの事……好き」

(に、二番目!まさかの二番目!)


 自分が何かをやらかして、幻滅される方。


「ま、ままま、待ってください!」

「なんで……え?」


 言葉を遮られた穂村が、目を大きく見開いた。


(今告白されたら終わってしまいます!全部、全部!)



 走馬灯のように、奈々未の脳裏にあふれる記憶。


 朝早く起きて、穂村が少しでも気分良く過ごせる様に机をぴかぴかにした毎日。


 横顔を盗み見ては、嬉しくてニヤけて。


 他愛もない話ができたら、ガッツポーズをして。


 笑顔が。

 声が。

 穏やかな表情が。


 部活を頑張る姿が。

 気遣いが。

 性格が。

 

 全部。

 全部。

 全部。


 奈々未の世界から、零れ落ちようとしている。


 好きで。

 好きで。

 好きで。


 幸せだった。

 それが、今。


 想い出に変わろうとしている。



「お、朧……」

「やですっ!」

「えっ」


 一瞬の硬直の後。

 穂村は、拒絶された事に呆然とする。


「私!もっと!可愛くなれるです!」

「……え?」


 想定外の言葉に、さらに固まる穂村。


「私!こう見えても一途なのです!」

「あ、え?そういう風にしか見えな……」

「私!尽くす事ができる女なのです!」

「あ、あの……おぼ」

「私ぃ!穂村君の事が誰よりも!大すっ……き……!なんですぅ!なのになんで!アンラッキーセブンの日に告白するの……!やだ!やだ!私の世界からいなくなっちゃ、やだあああ!」

「うえええ?!」


 ボロボロと零れ落ちる大粒の涙を両手で拭いながら泣きじゃくる奈々未に、驚きを隠せない穂村。


 そして。

 一瞬のためらいを見せた後に。


 自分の手のひらで奈々未の涙を拭い、抱きしめた。

 

「……!!」


 奈々未はばたばたと、腕の中から抜け出ようとする。

 穂村は、こらえきれない!という表情で囁いた。


「今日がダメって言うなら、明日でも明後日でも、朧月さんが良いって言うまで告白、待っちゃダメ?」

「……え?」



 泣き止んだ奈々未と、泣き止むまで奈々未の肩を優しくさすっていた穂村。


「だ、だって……アンラッキーセブンの日に告白するのは付き合わないからじゃないんです?」

「あ!そういう事だったんだ!」

「何ですかぁ」


 苦笑いする穂村に、唇を尖らせる奈々未。

 気持ちが通い合って、可愛い甘えが出ている。


「……占いには続きがあってさ。『アンラッキーを乗り切ったら、好きな人に想いが届く大チャンスも!』って」

「え?」

「だから、学校に来る前にアンラッキーをしっかり数えてたんだ。これはアンラッキーだ!って思えたのは8。だから今日告白するって決めてた」

「……それを先に言ってくださいよ!もう!もう!」

「ええー……あいたたた?!」


 ぺち!ぺち!と穂村の身体をで叩く奈々未と、でそれを受けて笑う穂村。



 ……手を繋いでる時間、長すぎですよ?

 ごちそうさま。

 



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【KAC20236】奈々未ちゃんは、今日も何かと忙しい。 マクスウェルの仔猫 @majikaru1124

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