深夜の散歩はいつも

くまの香

深夜の散歩はいつも

今夜は子供の夜泣きが全然治らない。

2時か3時あたりからずっとぐずり続けている。

オムツは濡れていないしミルクは飲ませた。

オデコに手を当ててみるがねつはない。

何で泣き止まないかなぁ。


「どうした?泣き止まないな」

夫が起きてしまった。


「あ、ごめん、寝てて 少し外であやしてくるね」

「俺が行こうか?」

「ううん、大丈夫だから寝てて」


夫は仕事で疲れているから専業主婦の私が頑張らなくちゃ。

私は抱っこ紐で子供を横抱きにして、靴を履いて外へ出た。

当然外は真っ暗だ。

玄関の前で子供を揺すってあやしていると、向かいの奥さんと旦那さんが出てきた。


目が合い会釈をした。

「こんなに早く出勤ですか?大変ですね」

「そうなのよー うちのひと、今週は早番なんですって

ミサちゃん寝ぐずりなの?恵美ちゃんも大変ね」


娘の顔を覗き込むと目はパッチリ開いたまま口がひしゃげていた。

まだまだぐずりそう。

公園まで散歩コースかな。


「ちょっと山岡さん!こんな時間にゴミ出しちゃダメじゃない」


顔を上げると三軒向こうの旦那さんがゴミ置き場にゴミを出していた。

「あ、すみません うちのが実家に帰ってて…僕も今日は早出しなくちゃならなくて」

「あらそう、しかたないわね ま、こんなに暗かったらカラスもこないわね」


そんな話を耳にしながら公園へと歩いた。

灯りがひとつあるきりの公園はかなり暗かったが、このくらいの明るさの方が娘の眠気を誘ってくれる。

私はブランコに座りブラブラと揺すった。


静かな闇に包まれた公園でユラユラ。

娘の瞼が落ちてくる。

そろそろ戻っても大丈夫かな?

顔を上げると、公園の柵の横を小学生がひとりトボトボと歩いている。

その後ろにサラリーマン。



もうそんな時間か。

時計を見ると7時を過ぎていた。

空はまだ真っ暗で星が輝いていた。

公園脇の道を通る小学生達もサラリーマンもライトの付いたヘルメットをかぶっている。



十数年前にポールシフトとやらが起こり、日本は一年の半分が日の昇らない日になった。

私が子供の頃ならこの時間は『早朝散歩』だったのだけど、今はこれ、『深夜散歩』なのかしら?


24時間深い夜が続くのよね。

赤ちゃんが寝ぐずりなるのも仕方ないわね。

寝ても寝ても夜なんだもん。

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