第29話 21世紀イレギュラーズ、作戦決行
「もちろん! 私、友達のアイリーンが死んだ本当の理由が知りたいの。
ピエロがあんなことしたの今でも信じられない。
いつもは無口で大人しくてとっても正直な人なの。
彼が嘘ついた所なんて一度も見たことないわ。
アイリーンの死体に細工したのは確からしいけど、殺したなんて……
きっと何か訳があるのよ」
「わかった。モリアーティには地主の権限で、わたしを探偵として雇ったと紹介して欲しい。それなら私の質問にも素直に答えてくれるだろう。
黒兎は、得意の鼻で首を探してくれ。ピエロには隠す時間があまりなかったはずだ。多分、サーカスの敷地の何処かにあると思う」
「デモ ワガハイ、 ソイツ ノ ニオイ シラナイゾ? ドウ サガセバ イインダヨ」
黒兎が言うと、ワトソン君が助け舟を出した。
「何言ってる。お前、死体のスカートの中に潜って下の毛の色を確認してただろ。あの匂いだよ」
「ナンデスッテ、 サンゴ ソンナコト シテタノ。 イイトコ アルト オモッタ ノニ サイテー!」
兎娘が怒ってしまい、黒兎は大慌て。
「ソ、 ソンナ…… モリアーティ カケハ ワガハイ ガ カッタヨナ。 ナントカ シテクレヨー。 シテクレナキャ テツダワ ナイゾ!」
「うーん……マザー、五代目と人間になった兎娘が結婚したら、子供は人間の子が生まれると言ってたよね。兎の子供が生まれる可能性はないの?」
「そうね。両親が子作りした時の似姿で産まれるはずだから、もし二人とも兎の姿の時に子作りしたなら、兎の子が生まれると思うけど」
「「ハァ?」」
マザーの言葉に、兎娘と五代目が、同時に叫んだ。
「黒兎君のブラックホールが消滅するには、まだ時間があるよね。
それまでに二人が女の子の兎を産んでくれれば、黒兎君も子孫を残せて問題解決。 兎は多産で成長も早いから間に合うと思う。それでどう?」
「ホントカ? ヤッター」
黒兎は飛び跳ねて喜んでいる。
「ちょっと待ってよ。僕、うさぎになるなんて聞いてないよ」
あわてる五代目を、モリアーティが止めた。
「だから、話だけだって。ここは話を合わせて、ね?」
おいモリアーティ、目が笑ってるぞ?
「六代目が、兎……」
いかん、ワトソン君が崩壊してる。
「だから、話だけ!ほんとにやるわけないでしょ」
マザー、ナイスフォローだ。
だがモリアーティが言ったとなると、嫌な予感……。
「では各員配置につけ、作戦決行!」
「「「「「「「アイ・アイ・サー」」」」」」」
全員の声が揃った、いいメンバーだ。
◇
「こっちが科捜研。見取り図によると……こっちかな?」
「モウ、ナニ トロトロ シテルノヨ。サンゴノ ホウガ ヤクニタッタワヨ!」
「ごめん」
穴を掘っていた兎娘が、イラついて五代目を叱りつけた。
「大丈夫よ。出たところで透明マントを使えば探せるから」
こりゃ結婚したら尻に叱れるわね……マザーはこっそり思った。
◇
「どうだ、匂うか?」
黒兎のハーネスを引っ張り、ワトソンが言った。
「アンマリ……フルイ ニオイ シカ シナイ ナ」
ここはサーカスの敷地内。お墓参りを兼ねて
「ワガハイ ヒトリ デ ヤレル ノニ。 カオ マデ カエル ヒツヨウ ナイダロ」
「僕は昨日サーカスで見られてるから、マズイと思ってマザーに頼んで変えてもらったんだ。どんな顔になったのか見てないんだが、そんなに変な顔か?」
「ベツニ ヘンジャ ナイケド……」
「どのみち兎が一匹で歩いてたら不自然すぎる。それにサーカスには、熊とかもいる。捕まったら、食べられちゃうかもしれんぞ」
「ソシタラ ホール デ、 ニゲル」
「そこを誰かに見られたらアウトだろ、大騒ぎになっちまうよ。それに連絡入れるのに、兎が携帯電話で喋ってたらまずい。やっぱり誰か人間がいないとダメだ」
そう理由をつけて捜査に参加したワトソン、本音は留守番が嫌だったからなのだ。
「メンドクサイ ナー ワカッタヨ」
鼻をヒクヒク、
◇
「ただいま、戻りましたー」
五代目が穴から這い出してきた、兎娘とマザーが続く。
ここは教会の礼拝堂。私とモリアーティとアリス嬢が、ピエロとアイリーンの父親の到着を待っていた。
「見つけたか?」
「はい、念のため携帯で写真撮ってきました。今、パソコンで拡大します」
私の言葉に、五代目がパソコン画面を開いてみんなに見える様にした。
「頭も体も首以外の外傷はなし。頭部は切り口に生体反応があり、首から下の切り口は、生体反応なし、死んでから切られてます。
初代ワトソンさんの見立て通りでした。
他に新しい傷も、毒物の反応もなし。つまり下半分の死体は、頭部か頸部の損傷で出血死したわけです。頭を殴られたとか、首をナイフで切られたとか。
後、下半分の首の切り口に、ライオンの毛が二本付いていたとの事です」
「他殺か事故か、それを隠すために頭だけ隠したのかもしれん。
頭部の傷を見ないことには断言できないな。黒兎の鼻に頼るしか無いか」
「あとこっちは、DNA検査の結果です。結論から言えば子供の父親はピエロでした」
「ええ! だってアイリーンとピエロは姉弟なのよ。まさか近親相姦?」
アリス嬢が悲鳴をあげた。
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