三月九日は千佳の推しの日。深夜の散歩道はミステリアスな出来事。

大創 淳

第四回 お題は「深夜の散歩で起きた出来事」


 ――僕は暗い道を歩んでいる。街灯を頼りに。


 明るい場所を求めることは、僕がとある小説サイトに登録してから。エッセイを書き始めてから。今日も書く。お題は深夜の散歩……この状況は間違いではないけど、夜遊びをしているわけではなく、ちょっとしたハプニングがあったからなの。


 それは、今日が三月九日だから。僕と同じく電車が推しの、推しのバンドのコンサートがあって、僕は出向いた河原町へ。バンドの名は『レミーロメン』


 三月九日は代表とする曲。僕が大好きな曲。


 その帰り……電車が運転見合わせとなって、復旧したのがシンデレラの魔法が解けそうな時刻。でも止まるの、最寄りの駅の二駅前。そこからは? 少なくとも一時間以上。歩く、歩いて帰る……と、決心した。


 見知らぬ道。標識を頼りに、できるだけ大通りを。一人称は『僕』でも、僕は女の子だから。夜の一人歩きは危険と、パパから言われている。心配しているの、帰ったら、きっと怒られる。スマホで電話を試みるも、……ないの、充電。ナビで使い過ぎたから。


 この展開は駄目なの。覆う暗闇、しかも周りには誰も。


 それでもって足音。コツコツと、アスファルトを叩いて……近付いてくる。


 急ぎ足。でもその足音も速度を上げる。追いかけてくる? なら走る。それでも走ってくる? 怖い、怖いと思って走ると、息切れも疲労感も半端なかった。止まる。撒いたかと思いきやスーッと肩に手を置かれ、サーッと上から下へ凍りついた。


 振り返ると、その相手は、


千佳ちか」と、僕の名を口にする。よく知っている相手だ。


梨花りか」……だった。僕はポロポロと涙が零れて、「バカ、怖かったじゃない」と言って、梨花は「だって声かけようとしたのに、千佳が逃げるから」と言った。


 ……あれ? 何で梨花は僕を追いかけてきたの? さっきまで僕一人だったのに? そう思った途端、……消えた? そこに、もう梨花の姿がなかったのだ。


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三月九日は千佳の推しの日。深夜の散歩道はミステリアスな出来事。 大創 淳 @jun-0824

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