運命の出会い【KAC20234】

あきのりんご

運命の出会い

「深夜の散歩に出ると、運命の出会いがあるかもしれないよ」


 路上営業の占い師にそんなことを言われた。

 占いなんて信じてないけど、婚活中の身で運命の出会いと言われるとさすがに気になる。

 というわけで夜の散歩に出てみたのだった。


 財布とスマホを入れた小さなバッグを片手に近所の公園へ向かう。

 深夜の住宅街は寂しくて怖い。

 人通りもないし帰ろうかな。

 すると背後から聞き覚えのある声がした。


「影山さん? どうしたんですか?」


 振り向くとそこにいたのは同僚の日向さんだった。


「ちょっと散歩に。日向さんは?」

「私はジムの帰りです」


 ジム帰り! 意識高いな!

 そういえば昔、読モをやっていたと聞いたような気が。

 オシャレな彼女はジャージ姿でもキラキラしている。

 地味女の私には彼女は眩しくて……苦手だ。


「こんな時間に出歩いてると危ないですよ」

「はあ」


 いや、私よりあなたの方が狙われるわよ。

 まあいいや。他に誰にも会いそうにないし、適当にあしらって帰ろう。


「じゃあ私は」


 このへんでと言いかけたとき、背後から走ってきた人が私の肩にドンッとぶつかった。そして強く引っ張られる。

 肘にかけた小さなバッグを、怪しい男が引っ張っている。

 これって……。


「泥棒!」


 非力な女二人組が相手ならひったくりもチョロイと思われたのか。

 バッグを取られまいと必死に頑張っていると、視界の端で日向さんが足を上げくるりと回転するのが見えた。


「ぐあっ!」


 何が起きたのかわからない。

 日向さんの後ろ回し蹴りを喰らった泥棒は、気を失ってパタリと倒れた。


「大丈夫ですか?」


 心配してくれる日向さん。


「日向さんすごい、ありがとう!」

「ふふ、キックボクシングジムの帰りなんです。技を試してみたかったんですよね」


 やだ、イケメン。

 にっこり笑う彼女に、胸の奥がキュンとした。

 それ以来、彼女と私は急接近した。

 数年後、まさか彼女と結婚するとは思わなかったけど。

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