1話

入学式、

今年の春は例年よりも暑く、葉桜で迎えた入学式。

パッとしないな、と思いながらも高校という新しい環境に胸を躍らせた。


下駄箱で配られた入学生だより、ずらりと並んだ入学生の名前に自分の名前をみつけ、教室へ向かう。


同じ中学から来たとみられる女子の集まりが階段の前で写真を撮ったり、はじめまして〜!と挨拶を交わして自己紹介を初めていた人もいた。


なんだか、ドキドキする。


僕も、教室に入ったら近くの人に話しかけよう。

そう心の中で意気込んだ。


教室の扉の前で、大きく深呼吸をした。

いける、いける、大丈夫。


ゆっくりと扉を開く。

教室の中は、廊下や階段と同じように賑わっていた。

ほっとした、僕を知ってる人はにはいない。


僕は、自分の席につき周りを見る。

誰かに話しかけたいな、とそわそわする。


“よ、俺 前野まえの れい!前の席ね、君は?”


みるからに友達をいっぱい作ってそうな男の子が話しかけてきた。


「えと、僕は 明葉めいはみお。もしかして漢字同じかな。」


れいはまるでしっぽが生えたように顔を明るくした


“まじで!?運命じゃん!仲良くしような!俺初めて同じ漢字の人見たんだけどこんなに嬉しいとは思ってなかった!

これからよろしくな!みお!”


れいは僕に手を差し出し、握手をしてくれた。

れいは、背も高くて、顔も一般的にはかっこいいと言われるような顔をしているように見える。人懐っこい笑顔でみんなの目を引くようなそんな人だと感じた。


「僕も、れいみたいにかっこいい人と漢字が同じなんて、すごく嬉しいよ。」


れいはきょとん、としてから顔を赤くしまた、笑顔になった。


“なんだよー!会ったばかりなのに嬉しいこと言うじゃんみおー!仕方ないからこの俺がいい場所教えてあげる!さっき見つけたんだよ!”


れいは強引に僕の手を引いて走っていく。


裏庭、というのだろうか。

すこし涼しい空気や日当たりの悪い場所。


だけど、心地がいい。


みお!あれ見て!”


れいが指さす先には満開の桜が残っていた。

もちろん桜は綺麗で目が離せないほどの妖美な雰囲気をまとっていた。


でも、それ以上に目を引いた人がいた。


150cm程の小柄な体の少女が。

きっと同じ入学生だ。

桜の木の下で立っている。


細い線で描かれたような髪が、時間の流れを感じさせないように1本1本がさらさらと流れる。

目を離したら風景と同化してしまいそうな白く細い手足。

ここにいるよ、と控えめに主張してくる大きな瞳は、僕を掴んで離さなかった。


「あ...あの。」


咄嗟に出てしまった声が彼女を逃がしてしまった。

目を逸らし、顔を隠してどこかに逃げてしまった。


“......みお?”


意識が抜けてしまったかのように、ぼーっとしてしまった僕に、遅れてれいの声が聞こえてくる。


「ご、ごめんれい。桜綺麗だね。」


れいはすこし目を伏せた気がした。

でも、直ぐに笑顔に戻った。


“そうだよな!綺麗、だよな!もうすぐ時間だしそろそろ戻ろう、ごめんこんなとこまで。”


れいは顔を赤くしていた。


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無題 月色 いち @yunyun_029

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