第4羽 そして、犯人は・・・

「そうか!」


黒板に飛びつき、『マニタ』の字に目を凝らす。

何か透明なもので線が加えられている。おそらく、ヒロコが透明のインクを指に付けて犯人の名前を書いたのだろう。


そして、この透明のインクの正体は蓄光インクだ。

『ニ』の二本線の間に、透明な線が見える。


「マ・・・エ・・・」


ここまで読んで、全員がマエダの方を向く。

いや、『エ』じゃなくて、『キ』だ。


「マキタ?」


いや、ちょっと待てよ・・・

「みんなカーテンを閉めて、部屋を暗くするんだ」


窓の近くにいた子がカーテンを閉める。今日は都合良く、曇っている。


真っ暗になった教室。


黒板に文字が浮かび上がる。

ゴクリ・・・


全員が息を飲む。



マ キ タ ブ

ジ テ ン ッ

ア ク ジ コ

リ レ ョ ロ

ガ テ ウ |

ト   ビ 先

ウ   オ 生

    メ 

    デ

    ト

    ウ


「せーの!」

「ハッピーバースデー!」


教室にいる全員が大きな声で言った。

急に教室が明るくなり、クラッカーの音がはじける。


そして、血まみれのヒロコが起き上がる。


「びっくりした?この血糊もインクだよ」


笑いながら続ける。


「ドラゴンブラッドっていう色だよ。高かったけど、奮発しちゃった」


ヒロコのこんな笑顔を見たことがない。

よく見ると、ちょっと薄めの赤だ。このビンを頭からかぶったのか。


「リョウジとカズ、なんであんなに演技下手なの。面白くて震えるのを我慢するのに必死だったじゃない」


そうか、ヒロコが痙攣しているように見えたのは、笑いをこらえていたのか。


みんながわいわい、僕の周りに集まってくる。

そこに後ろのドアから校長が入ってくる。

なぜか満面の笑みを浮かべている。

子どもが怪我をしたと連絡して来てもらったのに。


そういうことか。


校長が今までに聞いたことのない晴れ晴れした口調で、


「誕生日おめでとう!ブッコロー先生!このサプライズは、6年生のみんなが計画してくれたんだよ。本当に良いクラスになったようだね!」


教室の中は、割れんばかりの拍手に包まれた。


卒業式まで、まだまだこのクラスは楽しめそうだ。みんなありがとう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

離島の小学校に赴任したミミズクの先生。 TN太郎 @butaro-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ