ヨルマチトモダチ(陰キャのサイドストーリー)

136君

ヨルマチトモダチ

 小学生にしてはダメな趣味かもしれないが、俺は深夜の散歩が好きだ。夜の街のドキドキとポリさんに見つかるかもしれないドキドキが合わさって、鼓動の高鳴りがたまらない。


 親にバレないように家を出る。今日も静かな街がそこにある。俺は靴を鳴らして歩き始めた。


 ここ最近毎日のように出歩いているから分かるが、小学校の方に行くと少し星が見える。小学校の周りには電灯が少ないからだ。


「わぁ!」

「うわぁ!ビックリしたぁ〜!」


急に声をかけられたのでその方向を見れば、幼馴染の楓がいた。


「奏、しーっ!」

「あぁ、悪ぃ悪ぃ。」


よく言えば仲がいい。悪く言えばお互いのことをなんとも思っていない。そんな関係。ちなみに俺の初恋はコイツだ。


「んで、どうしたんだ?」

「どうしたも何も奏の方でしょ。なんでこの時間に。」

「んん?だって、夜が好きだから。」

「あー(棒)。」

「あー(棒)って何なんだよ。」

「別に。」


テキトーにあしらって俺は歩みを進める。すると、楓は俺の隣でポニーテールを揺らしながら歩く。


「どうした?」

「私も行きたいなぁって。いいでしょ。」

「夜は危ねぇだろ。」

「守ってくれるんでしょ。」

「しゃーねぇーなー。」


俺は心の中でガッツポーズしていた。


 学校までは意外とすぐ着く。少し坂を登るだけなのに景色は一変して、大自然の中に放り出されたような気持ちになる。


「へぇ〜。学校ってこんな感じになるんだ。」

「だろ。だから毎日見たくなる。」


5分くらい無言で見上げていた。俺はその横顔をたまに見ていたが。


「帰るか?」

「だね。」


楓は振り返る。俺たちは並んで帰路に着いた。


 帰り道には階段がある。暗くて見えないから楓に先に登らせて、俺は後ろからついて行った。


「あっ!」


楓が躓く。ある程度見越していたから、後ろに倒れそうになった楓を抱き抱える形になった。


「あぅ…」


俺はこの時、初めて楓が恥ずかしがっているのを見た。

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