ちょいとお疲れのあなたへ

夢神 蒼茫

ちょいとお疲れのあなたへ

 ちょいと寝つきの悪いそこのあなた!


 なんかストレス溜まっちゃっているそこのあなた!


 ほんの少しで良いから、一歩外に踏み出してみよう。


 そう、日の当たらない夜のお散歩だ。


 そこには誰もいない、ただ一人、君だけの世界だ。


 君を見つめてくるのは、夜空に輝く月や星だけだ。


 他に誰もいない、君だけの世界だ。


 お店だって閉まっている。


 昼間は人で溢れていたであろうスーパーも、人っ子一人いやしない。


 終電過ぎた駅舎だってそうだ。


 街灯と自販機だけが無駄に輝いている。


 そんな誰もいない世界を、ただ一人闊歩する。


 ほんの少し足を前に出してみよう。


 きっと世界は変わっていく。


 体を動かせば、代謝もよくなって消化促進に繋がる。


 同時に、筋肉が解れて疲れが取れやすくなる。


 程よい疲労感は、深い眠りを約束する。


 昼間と違って、紫外線だって気にすることないぞ。


 誰もいない一人の世界だからこそ、何よりもリラックスできる。


 何もない世界、音もない世界、聞こえるのは自分の呼吸と足音だけ。


 そう、サイの角のようにただ独り歩むのだ。


 ああ、今の私はまさにそれだ。


 ここには誰もいない、私だけの世界だ。



「お~い、ちょっといいかな?」



 おいおい、ポリスメェ~ン、気分出していたのに、全部台無しだよ。


 なに? 野菜泥棒だと?


 バカタレ、パトロール依頼したの、私だ!


 農家に向かって、野菜泥棒の職質たぁ、なんと失礼な奴め!


 そんなの見かけたら、力の限り握りしめたくわを、その脳天に叩き込むわ!


 ああもう、気分が台無しだよ。


 折角、独りの世界を歩んでいたというのに、無粋な輩で全部台無しだよ。


 あ、でも、パトロールはほんとにありがとうございます、はい。


 君達も夜の散歩をするときは、変質者に間違われないように気を付けるのだぞ。


 なお、野菜泥棒を見つけたときは、その場で肉骨粉にすることを推奨する。


 クズ野郎どもには、せめて肥しの足しになりやがれってんだ!



                  ~ 終 ~

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ちょいとお疲れのあなたへ 夢神 蒼茫 @neginegigunsou

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