夜道の出会いに乾杯
惣山沙樹
夜道の出会いに乾杯
深夜二時。お酒が足りなくなったわたしと真由美は、コンビニへ買い出しに出掛けた。周囲には誰もいない。だから、そっと手を繋ぎ、指をこすらせながら寄り添って歩いた。
コンビニの明かりが見えかけた頃、中学生くらいの女の子がぽつんと夜道に立っているのが見えた。
「綾子。あの子、どうしたんだろ?」
真由美は迷うことなくその女の子に声をかけた。
「どうしたの? こんなに遅くに一人で」
「あのっ……いえ、何でも、無いです、大丈夫です……」
女の子はさっと顔を伏せた。しかし、その前に見てしまった。彼女の目が真っ赤に腫れているのを。
「そうだ! お姉さんたちが、飲み物でもおごってあげる」
膝を折り、女の子と目線を合わせて真由美は言った。
「お金なら、持ってます」
「いーのいーの。ささっ、一緒にコンビニ行こうよ」
真由美は女の子の手を取ると、ずんずんと歩いて行った。とんだお節介じゃないのかなぁ、とわたしは思ったのだが、彼女はいつもこうだ。困っている人を放っておけない。
コンビニに着いたわたしたちは、カゴに缶チューハイを放り込んでいった。女の子は、それを大人しく見ているだけだ。明るい所で見ると、髪は伸びっぱなしといった感じで、思わず手入れをしたくなってしまうような様相だった。
女の子はホットレモンを選んだ。財布を出そうとするのを、真由美が止めさせた。袋いっぱいの缶チューハイを持って、わたしたちはコンビニの駐車場へ行った。
「ここで乾杯しよう!」
にっこりと微笑む真由美に、女の子も観念したのか、ペットボトルのフタを開けた。
「乾杯!」
こくこくと飲み物を飲むわたしたち。辺りは静かだ。わたしは言った。
「それ飲んだら、早く帰りなよ。何があったのかは聞かないから」
「はい。ありがとう、ございます」
女の子はわたしたちと反対方向の道を歩いて行った。どうか、彼女に幸福がありますように。わたしはそう願った。
夜道の出会いに乾杯 惣山沙樹 @saki-souyama
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