星まつりの夜【KAC20234】

朝風涼

 星まつりの夜

 きっかけは、桜が流れ星を見たことがないということだった。


 どこか、安全に星を見れる場所は無いかと調べて、ようやく星空で有名なキャンプ場に予約をすることができた。


 8月12日。

「はらっぱキャンプ場」に向かって、僕らは中央高速を飛ばしていた。


 今日はペルセウス座流星群の極大日なのだ。


 途中のサービスエリアでトールラテとサンドイッチを買い、屋台で牛肉の串焼きを買って、そそくさと車に乗った。


「とりあえず、急いでキャンプ場に行こうか。何が起こるかわからないからね」

「賛成。どんどんいっちゃおうよ。安全運転よろしくね」


 若干心配な僕の心を知ってか知らずか、桜はFMから流れる音楽を聴いて鼻歌を歌っている。


「ユーミンっていいよな」

「五輪真弓もいいよ。今度コンサートに行かない」


 そんな会話も楽しかった。


 キャンプ場についたら、すでに3時を過ぎてしまっていた。


 夏休みのキャンプ場は、人が結構多かった。

 いちばんすみっこに、テントを張ることにした。


 夕食はインスタントラーメンにした。


 コッヘルに水を注いで、バーナーで加熱すればすぐ沸騰する。ラーメンをいれたら3分で完成だ。

 サービスエリアで買った、牛肉の串焼きも入れたら、意外と豪華なラーメンになった。


 ビールとラーメンを堪能して、すぐにシュラフに入った。



 夜の12時に起きた。

 

 さすがに、この時間まで起きている人は、ほとんどいなかった。


 満天の星空だ。でも、疲れてくるので長くは見ていられない。


 ふと思いつき、テント前にレジャーシートを重ねて敷いて、シュラフをもって外に出た。


 シュラフにもぐって、上を見た。全天が見えるので、見つけやすくなった。


 時折、星が流れる。


「あ、ながれたよ。右の方だったよ」

「お、今度は下の方、大きかったぞ」


「お願い事した?」

「無理無理。すぐ消えちゃうからだめだった」


「きれいだね。来てよかった」

「だろ。真上の白いのが、天の川だよ」



「ところで、お嬢様、真夜中の散歩はいかがでしょう」

「え? 今から歩くの」

「はい。素晴らしいところに、ご案内してさしあげます」



 向かったのは、昼間みつけておいた、シロツメクサの群生地。


「わあすごい。まるで星の花みたいだよ。今日は星まつりの夜だね」


 星空と星の花を見ていた僕らは、星の海にいた。








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星まつりの夜【KAC20234】 朝風涼 @suzukaze3

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