第二話 太陽の神銃②
その時だ。
予期せぬ来訪者が、戦地に現れた。
「ちょ、ちょっとねえちゃん!
そっちいっちゃダメだよ!」
神宮日和と、草薙凛太郎だった。
凛太郎は日和が天照の結界内にいることに驚愕して「ねえちゃんと」叫んでしまっているが、日和は特に気にしていない。
天照の結界内に入り、束の間に斬撃音や地響きの振動が伝わる。
もう戦いが始まっているんだ。
––––凛太郎はまた戦いに戻ってしまった、でも神々の代行者として宿命が。
いやでもやらないといけないと思い彼は大麻を取りに帰ったはずなのに、気がつけばそれを日和が持っている。
不安を抱きながら、凛太郎も日和の後を追った。
そして二人が見たのは、政子・龍臣・レオが悪魔と戦っている姿だった。
日和と凛太郎が正宮の前へ辿り着いた時、草薙政子は剣を持ったまま、ふらついている。
その側で支える草薙龍臣と、尻尾が二つに別れた猫が二本足で立つ。
彼らの視線の先には緑色の皮膚をした筋骨隆々の“人”なのか分からない存在が一つ。
「なぜ、僕達以外の人が?
とにかく凛太郎……ここは危険だからその子と逃げるんだ!」
龍臣が叫ぶが、日和を見た悪魔は視線を彼女に向けた。
まるで獲物を狩るライオンのような飢えた目つきだった。
そして悪魔は野獣の如く雄叫びを上げ突撃する。
政子とは方角が違う。間に合わない。
「レオ! 二人を!」
「ちっ! 任せとけにゃ! 奥義
縦回転ではなく横回転。
威力よりもコントロールを重視し、日和と凛太郎の元へと悪魔が辿り着く前に弧を描きながらタイミングよく到達した。
悪魔も馬鹿ではない。
両腕をL字に作り、先程同様の防御姿勢を悪魔はとる。
「それはさっきと同じパターンじゃにゃいか! ちっとは学習しやがれ!」
両腕に火球が当たると同時に、自身の横回転を利用したレオは、悪魔の肘から背中、螺旋階段のように上りガラ空きの頭上へと駆け上がる。
頭頂部で到達したレオは、そのまま悪魔の頭上で振り火車を発動し続けた。
「オオオオオオオオオオオオオ!」
「これでもくらえ!」
悪魔は防御を解いて、頭上のレオを手で振り払った。
「にゃあああ」と泣き声を上げ、地面に叩きつけられるレオ。
だが居火車により、悪魔の頭は所々炎で削れていた。
「まだ浅い。草薙流神剣術、二の型、
トドメを刺そうと政子は地を蹴り、悪魔目掛けて飛ぶ。
深紅の炎を纏った剣は悪魔の頭上まで迫った。
だが、またしても悪魔は寸前で剣の軌道を見切り、自身の右腕を犠牲にするように左へ避けた。
その遠心力を利用した悪魔は体を捻りながら左腕で政子を薙ぎ払った。
「ぐう!」
悪魔の腕は、政子の背中に直撃し、その衝撃で政子は後方まで吹き飛ばされる。
呻き声を上げる政子の身体は、在らぬ方向に折れ曲がっていた。
天照の加護により再生はするが、時間はかかりそうだ。
唇を噛み悔しむと同時に、緑の悪魔はさらに日和達に攻撃対象を変える。
凛太郎は自分達に攻撃が来ることを悟るが、日和がいることで戦いずらさも感じていた。
「ねえちゃん、今のは見なかったことにして!
天照の結界が発動して、その結界内では現実世界と事情が異なる。
一応、怪我ならなかったことになるし、俺も腕がなくなったことがあるけど、現実世界では元に戻る」
己の経験を話す。
だが、妙な違和感だ。特に日和が驚いている様子はない。
目つきは真剣そのもの。
夢だと勘違いしているのか? 凛太郎は疑った。
それでも考える余裕はなく、彼女を連れて戦線離脱をしようと考える。
自分ではまだ神器召喚を成し遂げていないので、このまま日和を守り切れる自信がないからだ。
「油断するな! くるぞ!」
凛太郎の視線は悪魔の方に向いていて、龍臣の言葉で日和も我にかえった。
悪魔は「ウオオオオオ!」と雄叫びを上げると地面を蹴り、日和たち目掛けて飛ぶ。両方の足の裏で全員を押しつぶすように上空から落下を始めた。
「草薙流結界術、
龍臣が咄嗟に大麻を悪魔へ向ける。
結界を発動させた時と同様に空色の波動が放たれ自分や凛太郎、日和達を守る防御壁となる。
悪魔の攻撃と防御壁がギリギリとぶつかり火花が散った。
守護陣も最強の壁ではない。落下の重力もあり、徐々に押され始める。
「させないにゃ! 奥義、居火車!」
立ち上がったレオは、再び戦線に戻る。
炎を纏い、上空より落下する悪魔に回転しながらぶつかるが、同様に悪魔に腕でガードされた後、再び振り払われた。
神々の代行者側が劣勢だ。危機迫る状況で龍臣が凛太郎達に指令を出す。
「逃げろ!」
「ねえちゃん行くよ!」
凛太郎が力づくで日和を引っ張り離脱しようとした。
二人では足手まといになる。
日和と一緒にこの場を逃げるようとしたその時だ。
日和が手に持っていた大麻が突如輝きを放つと、そこから空色の波動が発生した。龍臣の守護陣の周囲を覆う防御壁を作った。
「え?」
「!?」
凛太郎も龍臣も困惑していた。
なぜ日和が大麻を使って術を発動したのか。本当にそれが術なのか、この時は分からなかった。
悪魔は落下の重力も利用して防御壁を打ち破ろうとするが、破れる気配がない。
防御壁を蹴って一度地上へ戻る。間合いをとり、様子を伺った。
「な、何が起きて……え? ねえちゃん?」
「君が持っているそれは……
凛太郎や龍臣は、日和が手にもつ物を見て驚愕する。
日和が持っていた
太陽のような紋様が装飾されて。
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