小雨が降る夜の散歩

四葉翠

第1話 深夜の散歩

夜の散歩は好きです

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ぽつぽつと少し暗い夜空から小雨が降っている。夏であるため少し涼しい気がする。更に小雨が降っているが少し月明かりがある。


これはもう、夜の散歩に行くしかない。昔この状態で散歩をした時から今度はいつこの状態で散歩が出来るのかと考えていた。


すぐさま玄関へと行き、濡れてもいい靴を履く。傘を持ち、念の為に反射材を手首に巻く。


いざ、散歩へ


静かな夏の夜に涼しさと良音を与える小雨。月明かりにも照らされ僕にとっては十分に幻想的な風景と呼べる。


今は大人になってしまったが、初めて夜の散歩に出たのは小学生の頃だった。ふと起きてしまいなんとなくカーテンを開け外を見て幻想的な風景に目を奪われた。気付いた頃にはパジャマのまま外へと散歩に出掛けていた。


知っている場所なのに知らない街の様に静かで幻想的な街並み。歩き過ぎて疲れている時にある女の子と出会った。


君はなんでここに居るの?お家に帰らないと


そう優しく言われてのを覚えている。でもどこからどう見てもその女の子は僕と同じくらいか少し上くらいに見えた。だから僕も言ったんだ、君だって帰らないと行けないじゃないかって。それに言わなかったが女の子は寂しそうな感じだったのを覚えてる。


その後はどうしたのか記憶が曖昧だが、夜が明ける前に家に着いて眠った様な気がする。そこから僕は夜の散歩が好きになり、定期的に行うようになった。それは大人になった今でも変わらない。


小学生の頃通ったルートで散歩をする。あの時の女の子の成長して姿に会えるかもしれないと思いを持ちながら昔と比べる。


あぁ、あのお店は無くなってしまった。ここの人は亡くなってしまった。新しい人や新しいお店が出来たなどを。


ただ小学生の頃の方がより幻想的だったなと身長が伸びた大人である僕は思う。


そしてあの日に女の子と出会った場所へと辿り着いた。


ここだったはずと辺りを見渡していると、不意に聞き覚えのある声で話かけられた。


また会ったね、君は大人になれたんだね


声の方へと振り向くとあの日と変わらない姿の女の子がそこに立っていた。


その後、女の子と話をしていると昔ながらの妖怪に出会った。どうやら女の子の友達らしく色々と話をしたり遊んだりと楽しく過ごした。


そろそろ夜明けが近くなっているなと思って来た頃に、女の子から


そろそろお別れだね、また会えると良いね


と言われた。少し涙が出てくる。


あはは、小さい頃と変わってないね。また送ってあげる。またね


女の子や妖怪達から別れの挨拶が耳に届くと同時に景色が変わり、いつの間にか自分の家の玄関前へと立っていた。


あの日もこうして送ってくれたのだろうか?生涯で忘れる事は無いだろうこの出会いに次がある事を空に向かって願い、家へと入った。

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