徘徊
柊 撫子
友達未満
深夜のコンビニでしばらく話してなかった奴と出くわす。
暇だから話し相手になってもらおう。
「や、やぁ。久しぶり」
「久しぶりだね」
「さ、最近あんまり話せてないけど、忘れたわけじゃ……ないから」
「知ってるよ。だからこうして話しかけてくれたんでしょ」
「う、うん」
「せっかくだし、お菓子でも買って帰ろ?」
と、囁かれた。
確かに、どうせ帰っても起きてるし。
コンビニに入ると、情報量の多さに圧倒された。
これだけたくさんの中から、必要なものだけを選ぶのは難しい。
「色々あるけど……何がいいんだろう」
「これは?美味しそうだよ」
言われた方を向くと、スナック菓子が目に入る。
「美味しそう、いいね」
「だけど僕のことは言うんじゃないよ、また怒られるだろうから」
と、釘を刺してきた。
「う、うん」
母さんを怒らせたい訳じゃない。
アイツの言う通りにした方がいいかも。
お菓子を持ってレジへ行くと、店員さんが睨んできた。
お菓子を差し出すと、店員さんが聞き取れない言葉を使う。
戸惑っていると舌打ちされた。怖い。
レジにお金を置いてお菓子を掴んで、逃げるようにコンビニを出た。
少し走って息が切れる。
「怖かった……」
「もう帰ろう、怒られるよ」
「う、うん」
家に帰るとやっぱり静か。
気づいたらアイツもどこかに行っちゃったし。
リビングからパジャマ姿の母さんが出てきた。
「あら、外出してたの?」
「うん。あのね、これ友達がコンビニで見つけて……」
そう言った途端、母さんは沸騰したように叫ぶ。
「まさか、またアイツが話しかけてきたの!?関わらないでって何度も教えたでしょ?」
「ご、ごめんなさい!だって、皆寝てるから、は、話し相手が欲しくて―――」
「だからって頭の中の別人格じゃなくて良いでしょお!?せっかくお薬で抑えてたのに!!」
あぁ、まただ。
また母さんを怒らせてしまった。
アイツの言う通りにしていれば良かったのかな。
徘徊 柊 撫子 @nadsiko
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