星降る夜のスライミアロード
汐海有真(白木犀)
星降る夜のスライミアロード
「なあエト、知ってるか? 世にも珍しい"スライム"の
冒険者の集まる
「世にも珍しいスライム、ですか? もっと遠くの地方には、ティアースライム、ブロードスライムといった
「いやいや、違うよ。この町の近くに、『スライミアロード』があるだろう?」
僕は
そもそもスライムは、モンスターにしては珍しく人間への敵意が余りないので、討伐依頼が出されることも
「ありますね。けれど、スライミアロードには、最もオーソドックスなスライムしか生息していないはずですが」
「はは、エトもまだまだ情報不足だな。晴れている日の深夜にだけ、とても
「へえ、そうなんです? 夜は大体寝ているので、全く知らなかったです」
「エトは早寝早起きだもんなあ。今夜はよく晴れるらしいし、たまには夜更かししてみたらどうだ? きっと
にっと笑ったジェスさんに、僕は「ありがとうございます」と感謝を伝えて、再びレモンティーに口を付けた。
世界は濃い夜に満たされていた。僕は光の魔法を使って辺りを微かに照らしながら、スライミアロードに向かっていた。夜風に吹かれた草原が、さらさらと優しい音を立てている。
「確か、もうすぐだったと思うけれど……」
僕はひとりごちながら、ゆっくりと歩く。普段は眠っている時間に起きているからか不思議な
気付けば、スライミアロードに到着していた。僕の他に人はいなくて、微かに響いている自分の足音を聞いていた。世にも珍しい
ぽよよん、と音がした。僕は目を見張ってから、光の魔法の範囲を拡大する。そうして現れたスライムに――僕は、驚きの声を
星空が溶け出したかのようなスライムだった。透明な身体は紺色に染まり、淡い金色の粒が散らされている。楽しげに跳ね回るものだから、
また、ぽよよん、ぽよよんと音がして、小さなスライムが二体、先程のスライムについていく。家族だろうか、そのスライムたちにも星空がまぶされている。
僕はようやく、
「……なるほど。反射、か」
昼に出会うスライムが青色をしていたのは、透明な身体で澄んだ空を反射していたからなのだろう。だから今は、こういった幻想的な見た目をしているのだ。
星降る夜のスライミアロード 汐海有真(白木犀) @tea_olive
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