夜行性のおさんぽ
アほリ
夜行性のおさんぽ
ホーホーホーホー。
深夜の丑三つ時。
とある里山の獣道を散歩している、テンのニフ。
「いいねぇ。いい月夜だねぇ。」
テンのニフの行く道を、上弦の月の光が照らす。
「まるで、この道は俺の為にあるような。いいねぇ・・・この清々しさ。」
ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、
テンのニフの足音だけが、静寂の深夜の森に響く。
ゆっくり歩くテンのニフはふと後ろ脚で立つと、辺りを見渡し鼻を付き出して周囲をクンカクンカと匂いを嗅いで、また再び獣道を歩き進んだ。
ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、
「俺ってやっぱり夜行性だなあ。暗闇の中散歩するのが愉しくなっちゃう。」
テンのニフは月の照らす獣道の道すがら、思わずスキップしなから歩いた。
スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪
「ぷーーーっ!!くくくく!!」
「誰だよぉ!!何が可笑しいんだよぉ!!」
テンのニフは暗闇の何処かで含み笑いが聞こえた方へ、血相を変えて駆けていった。
「怒んなって!怒んなって!」
「あ、君はアナグマのシペル。」「如何にもっ!!」
アナグマのシベルは、テンのニフと出逢えて嬉しそうだった。
「ねえ。ニフさん。」
「なあに?アナグマのシベル。」
「一緒にスキップして歩こう!!」「へ?い、いいよぉ。」
テンのニフとアナグマのシベルは、一緒にスキップをしながら深夜の獣道を歩いた。
スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪
「あれ?おふたりさん。何スキップして歩いてるの?」
獣道の側面の草葉からヒョッコリと飛び出して来たのは、ウサギのネモフィラだった。
「ネモフィラちゃん!!おこんばんわーーー!!」「今おひま?」
テンのニフとアナグマのシベルは、肉球を振ってウサギのネモフィラを呼んだ。
「ねー!!ネモフィラちゃん!一緒にスキップしながら、散歩しよ?」
「う~~~~~ん・・・私ウサギだから、スキップどころか高ぁーーーく飛んじゃうよ!!」
ノウサギのネモフィラは2匹にウインクして微笑んだ。
「じゃあ、行こう。皆でスキップぅ~~~!!」
3匹は、月に照らされた獣道をお互いスキップしながら散歩した。
スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪
「あ、おこんばんわ。」
今度は、キツネのコンテがやって来た。
「皆でスキップして愉しそうだなぁーー!!
おいらも混ぜてくれね?」
「ちょ・・・ちょっと待ってぇ!!おらも居るんだよぉ!!」
タヌキのポンチも、キツネのコンテを追ってやって来た。
「いいっすよ。で、スキップ出来る。」
「えっ・・・えええ」「やれるよっ!やればいいんでしょ?!」
タヌキのポンチとキツネのコンテは、おぼつかない足並みでスキップしながら、リズミカルな軽やかさてスキップを踏むアナグマとテンとノウサギに付いていった。
スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪
「みんな愉しそうだなぁーーー。」
とカモシカのノッチが、サラに
「私も混ぜてよ!!」
とシカのクガイが、やって来た。
「俺、スキップ得意だぜぇ!!」
「僕も!!シカはスキップ得意得意!!」
「いや俺の方!!」「いや僕だ!!」
「まあまあ、カモシカさんもシカさんも落ち着いて。
一緒に仲良くスキップしながら皆で散歩しよう。」
アナグマのシベルは、いがみ合うカモシカとシカを必死に宥めた。
「さあ。皆でスキップしながら真夜中の散歩を楽しもう。」
スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪
ドドドドドドドドドドドド!!
「?!」
突然、夜の静寂を裂くような轟音を響かせて1匹のイノシシが飛び出してきた。
「イノシシさん!いきなり飛び出してきて危ないなあ!」
イノシシのブータローは、大きな鼻を鳴らしてこう言った。
「皆スキップして何か楽しそうだから、興奮して思わず飛び出して来ちゃった!!」
ドシン!!ドシン!!ドシン!!ドシン!!
「今度は何だよ?!」
「あっ!!クマだ。」
ツキノワグマのゴンタロウは、大きな図体を軽やかにうねらせてスキップしながらやって来た。
「スキップってぇこんなもんかなぁ?!」
「うん!!上出来!!ド迫力!!」
テンのニフは、顔をひきつらせて前肢で『グッジョブ』のサインをした。
「皆こんなにスキップ仲間集まったなあ。こりゃ愉しい夜の散歩になるぞぉーー!!」
イノシシのブータローは、大きな鼻の穴をパンパンに孕ませてニヤリと笑った。
「皆、この満月の中の深夜のスキップお散歩行こう!!」
スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪
森の夜行性の動物達が、皆で軽やかにスキップしながら月の光のスポットライトの当たる獣道を歩いた。
スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪
「おおーっ!!皆スキップしてる!!」
「私も混ぜて混ぜて!!」
森の木の枝から空から、ムササビのムーチョとフクロウのホォタが飛び交い、この珍妙なスキップの集団に加わった。
スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪スキップ♪
愉しそうにスキップしながら深夜の散歩する動物達は、獣道を延々と歩き続けた。
皆笑顔で満ち足りたように。
種族を越えた生きる喜びを分かち合い、まるでお祭り騒ぎのように・・・
やがてスキップの集団は、丘の上に集まった。
空には大きな満月の光が、動物達を照らしていた。
「久しぶりだねえ。皆で満月を見上げるのは。」
「以前に皆で満月見たのは、皆で黒い風船を追い掛けてた時だよなあ。」
「あの黒い風船、何処へ飛んでったんだろうね。」
アナグマのシベルとテンのニフは、目を潤ませて肩を抱きあって、皆を見守るように照らす満月を見詰めた。
「ところでさあ。」
「なあに?ニフさん。」
「君、スキップする時にやけに高く飛び上がり過ぎてないか?」
「あれれ?俺、別にそんな気はしなかったんだけどなぁ・・・しかし、今さっきから身体がとても軽くなったような・・・」
と、アナグマのシベルは身周りを確かめた。
「げっ!!」
アナグマのシベルの顔は青ざめた。
「く、黒い風船がいっぱい身体に絡んでる?!」
すると・・・
「きらーん。」
「きらーん。」
「風船だ。」
「ふうせんだ。」
「風船・・・」「風船・・・」
「風船!!」「風船!!」「風船ちょうだい!!」「風船ちょうだい!!」
「風船ちょうだーーーーーい!!」
森の動物達は、アナグマのシベルの身体中に絡んだ黒い風船を見つけたとたん目が爛々と輝き、ニヤニヤとニヤケながらシベルを方を向いた。
「げぇーーーーーーっ!!悪夢と再びぃーーーー!!」
森の動物達は、アナグマのシベルの付けた黒い風船を取ろうと一斉に追い掛けてきた。
ドドドドドドドドドドドドドド!!
「風船だー!!」「風船だー!!」
「ひぇぇーーーー!!」
アナグマのシベルの身体は、身体に絡んだ風船の束の浮力で深夜の月の光をバックに浮き上がって、この獣道を軽いステップを踏むようにまるで高くスキップするように、風船をせがむ動物達から逃げていった。
~夜行性のおさんぽ・・・じゃなくて、夜行性のおいかけっこラウンド2??~
~fin~
夜行性のおさんぽ アほリ @ahori1970
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