卒業式の日に何やってんの?

家猫のノラ

第1話 しよっぱい春風に吹かれた 20年前、約400Km離れた場所

ワークを開く、朝9時。

なんのためにやっているのか、サイコロを転がしまくる問題文。

同様に確からしいってなんだよ。


ああ集中できるわけがない。


今日は卒業式だ。

某卒業ソングのせいで、卒業式といえば3月9日という印象があるが、3月8日である。

うちの学校は例年、卒業生とその保護者、生徒会役員のみが参加する。

私は先輩を送れない。


ああ集中できるわけがない。


瞳を閉じればあなたがいるらしいが、ワークを閉じれば後悔があるだけだ。


昨日の疲れが今になってやってくる。

委員会の仕事と私情の執念で、パイプ椅子をミリ単位で並べた。

保護者席はどーでもよかったのでひたすら卒業生の席を揃えていた。

ていうかもうどーでもよかった。

先輩の席だけきっちりやりたかった。

いや、それすらも…


春は嫌いだ。

出会いの季節と言えば聞こえはいいが、実際は別れの季節だ。


祝いたくなんかないよ。

義務教育もっと長くしろよ。


気づけば寝ていた、昼12時。

式は終わっただろうか。

瞳を閉じてもやはりあなたはいなかった。


開けた時、あなたが目の前にいる確率は何%ですか?


世界は同様に確からしくない。

平等にチャンスがあるわけではない。


ああ集中できるわけがない。

明日からどうやって授業を受けようか。


瞳を開けて、外を見る。しょっぱい春風が木々を揺らす。


前が見えない。

あなたが見える。


大丈夫、大丈夫。

春は綺麗だ。

また新しい出会いがある。


今日はしっかり寝よう、瞳が腫れないように。


青い春を見上げて歩こう。

角でイケメンとぶつかるかもしれない。


ああ集中できるわけがない。


ああまたドキドキできるじゃないか。


次の恋を探しながら、先輩に思いを馳せる、夕3時。

やっぱり少し後悔が残る。ただ、今はそれすらも味わいたい。











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