フライトアテンダントは優雅です?
あらたにみのる
第1話 フライトアテンダントは優雅です?
……みなさんは、フライトアテンダント、もとい客室乗務員という職業にどのような印象を持っておられるでしょうか?
現地で素敵なホテルに泊まれる?
海外旅行がたくさんできる?
気配りができる?
英語ができる?
美人が多い?
上記に記したものも、決して間違いではありません。
そしてもちろん、どこの国の航空会社でどの路線に勤めるかによって違いはあります。
しかしまず一言に要約なら、こう表現します。
「空飛ぶガテン系」
そして働く航空会社が中東であるならば、そのガテン度は増しに増します。
その理由として一つ目に上げられるのは、同僚のフライトアテンダントです。
日系やアジア系、或いはヨーロッパ系の航空会社の場合であれば、共に働くフライトアテンダントもやはり人種がある程度固まっています。アジア人同士であればやはり阿吽の呼吸や、フライトアテンダント同士でも気遣いがあります。
ヨーロッパ系で働くとなれば、同僚はドイツの航空会社ならドイツ人、オランダの航空会社ならオランダ人と、ほぼその国出身者が同僚となるので、慣れとともに要領がつかめてきます。
一方、中東の航空会社になると……
まず使用する航空機ですが、日本線の機材はボーイング777型や787型、あるいは二階建て式のエアバス380型。
そこで働くパイロットを除くフライトアテンダントはおおよそ2~30人程搭乗しています。
日本人フライトアテンダントも、エコノミー、ビジネス、ファーストクラスとそれぞれに最低1名はいることが通常です。
しかしそれ以外の20余名の国籍は、バラッバラです。
え?
どんな国籍構成かだって?
こんな感じです。
日本
韓国
タイ
南アフリカ共和国
ブラジル
ドイツ
ルーマニア
スロバキア
トリニダード・トバゴ
パキスタン
エジプト
モーリタニア
ラトビア
チュニジア
そしてフライトアテンダント全員の母国語はバラッバラ。
唯一の共通言語は英語。
こんな感じの国籍構成なんかは日常茶飯事で、英語を母国語としないものしかいない……なんてこともよくあります。
もちろん、採用試験やトレーニングを合格してクルーですので、英語力はしっかりあるんです。
でもやっぱり、それぞれの訛りやアクセント、あるいは勘違いなんかもあり、コミュニケーションをとってても「???」なんてことはよくあります。
あまりにも伝わらないと、乗務中にケンカに発展することもしばしば……
ただでさえ忙しい客室も戦場なのに、クルーが控えているギャレー(キッチンのような場所)も修羅場と化すことがしばしばあります。
中東の航空会社で勤務すると、ガテン度が増す理由の二つ目に上げられるのは、その国の「就航国」です。
言い方が悪いかもしれませんが、日系の航空会社はインドにも就航していたりしますが、しかし基本的には東アジア、東南アジア、オセアニア、ヨーロッパ、北米といった、いわゆる「おきれい」な国がほとんどです。
一方、中東の航空会社は文字通りに全世界に就航しています。
インドやパキスタンは勿論のこと、バングラデシュ、ザンビア、アフガニスタン、ジンバブエなんかにもフライトし、そして現地でレイオーバー(宿泊)があります。
インフラが整備されていない国へのフライトが終わったあとの機内は、それはそれはすごいことになっています。
機内食のフォークやナイフの使い方。
ごみの捨て場所。
トイレの場所。
排泄の方法。
こうした「あたりまえ」と思えることを、一部の国の人たちは知らない。
使い方が分からない。
方法が違う。
日本に住んでいると「あたりまえ」と思っていることが「あたりまえ」でなかった衝撃にぶち当たります。
方法を説明をしても、言語を理解してもらえない。
同僚クルーと協力しても、解決しないなんてこともしばしば。
そして外資の良いトコロでもあり悪いトコロでもあるのは、こうした事態に対して安全面で問題がなければ
「ま、いっか」
で放置が出来てしまう点です。
結果として、お客様が降機されたキャビン(客室)は、シートには泥がつき、毛布には機内食のソースが付着し、床には野菜が突き刺さったフォークが転がっており、座席のポケットには、なぜか食べかけのパンが挟まっており、機内トイレのトイレットペーパーは真っ白で綺麗なのに、トイレの床はなぜかびちゃびちゃで、正体不明の暗黒色の何かがべっとりと付着している…………
こんな機内の凄惨さと日夜格闘しながらも、フライトアテンダントは今日も必死に、優雅さを最大限に演出し、お客様を機内へと案内しているのです。
フライトアテンダントは優雅です? あらたにみのる @Aratanaru08
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
「私」の話/mil
★4 エッセイ・ノンフィクション 連載中 683話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます