第27話 スーサイド・コンバット④
『地上部隊二チーム、スナイパー位置確認したわ。もう帰ってきていいわよ』
タチバナさんからの連絡で、二人で本部へのエレベーターがある近くのビルに滑り込んだ。めちゃくちゃ肺が痛い。エレベーターの中で俺がしゃがみ込んで呼吸を整えてると、マナミさんに背中を撫でられた。マナミさん全然呼吸乱れてないし、マジで超人。
「……マナミさん、ほんと身体能力すごいね」
「んー、なんか
「はぁ?」
思わず変な声でてしまった。
「そのおじいちゃん、ドイツ人だったんだけど、戦争で死刑になるの逃げて日本来て」
その人、どう考えてもナチス系マッドサイエンティストじゃないですかぁ。やだぁ。
「被験者いないからって自分の息子で実験して、その子孫が私? みたいな」
俺の「人魚の肉食って不死身」ばりの雑な話しぶりに、我慢できなくて俺は笑いだしてしまった。俺がなかなか笑い止まないから、マナミさんはいつもみたく可愛い顔を不満げに膨れさせた。
「もう、ヨタ君。笑いすぎ」
そう言ってそっぽを向く彼女の顔を引き寄せて、キスをする。
「ごめん。ごめん。俺たち、お似合いだなって思って」
唇を離して、素直に思ったことを彼女に伝える。マナミさんは顔を真っ赤にして、フニャフニャさせて恥ずかしがるので、可愛くて俺はまた彼女にキスをした。
そんな感じにエレベーターの中でずっとキスしてたら、扉が開いた時に、俺達が来るのを待っててくれてたタチバナさんに呆れた顔で出迎えられたのであった。おっぱい揉むのは我慢してて助かった。また笑いのネタにされるところだ。
◇◇◇
ゲームの主催であるタカハシと名乗る男から提示された条件は一つだった。
『物資と人員の補充は朝に一回だけ』
確かに制限のない圧倒的な物量攻撃で蹂躙されたら、さすがにゲームとして面白くないということだろう。今日の地上部隊員は歩兵十五名に、狙撃手三名だった。現状残っているのは、歩兵六名に、狙撃手一名。今日はここまでだ。
そう思っていたら、雇い主の秘書が現れた。
「九龍様が少々ガッカリされております」
にこやか雇い主の不満を私に伝える。電話で済むクレームを入れにノコノコと戦場までやって来るなんて、忠義者なのか大馬鹿者なだけなのか。それにしてもこの男どこから現れたんだ?
「それは申し訳ございません。ところで、よくこんなところまで無事にいらっしゃることができましたね」
多少の嫌味を込めつつ、疑問を感じて尋ねる。
「ああ、タカハシ社長に秘密の通路から入れていただきました」
向こうの本部建物と繋がっているはずだと思ってはいたが、やはりそうだったか。このイベント運営会社への損害は最小限にする予定だったが、先方が先にこちら側に甚大な被害を与えてきたのだから、お互い様だろう。
「なんと。ではその場所を教えていただけますか? 九龍様のご期待に沿うためにも」
直接、向こう側に行ってターゲットを
◇◇◇
タチバナさんとタキ主任と一緒に敵がいるエリアに行くために隠し通路に向かう。途中でタキ主任が手に持っていたタブレット端末がピコンピコンと鳴り始めた。
「タチバナさん、なんかタカハシ社長が通路使ったようなんですけど」
「なんですって!? どういうことなの」
鬼のような形相になるタチバナさんにタキ主任は震えあがった。
「リゾート施設の方の通路なので、たぶんVIPの方の見学対応とか? ですかね」
タキ主任は恐る恐る推測を語る。タチバナさんは溜め息をついた。
「あの銭ゲバ、マジで邪魔しかしないわね。いつか殺してやる。それで、私たちが使おうとしてる所に問題は?」
「今のところはないです」
タチバナさんは、念のためインカムで全通路の扉の前に社員の配置を手配する。使用する通路の前に到着すると、タキ主任は扉の操作パネルをいくつかタッチした。それから、俺とマナミさんにタブレット端末に手のひらを乗せるように言う。掌紋認証のようだ。
「向こう側にはトラップ部屋がたくさんあるから、不用意に扉を開けて部屋に飛び込まないようにね」
タキ主任はそう言ってから、もう一度、敵の本部までの図面を確認してくれる。俺もマナミさんも図面を頭に叩き込んだ。それからタッチパネルに手のひらを置くと、通路のロックが解除される音がして、ウィーンとゲートが開き始めた。
マナミさんと二人通路に入ると、後ろでゲートが閉まる音がして振り返る。タチバナさんがサムズアップして、タキ主任は心配そうな顔をして見送ってくれた。
◇◇◇
コンピューター類が専門の特技兵である部下は、しばらく通路のパネルを弄ったあとで、振り向いて首を振った。
「秘書の方の掌紋で開けること自体はできると思いますが、おそらく彼以外が通路に侵入したらトラップが動く仕様かと。システム側からのトラップの解除は難しそうです。あとは通路の長さにもよりますが、トラップがある程度手前で発動するなら、爆破でしょうか」
彼は扉と壁に材質を測定する機器を当てた。そして、また首を振る。
「今持ち込んでいる機材じゃ、爆破も厳しいですね」
私は彼の肩を叩き、システムのクラッキングをもう少し試してくれと指示して、本部へと戻ることにした。念のため、彼のほかに隊員を二人護衛に残す。向こうから敵がこの通路を使って侵入してくる可能性の方が高いのだから。
◇◇◇
通路の反対側のゲート前に辿り着く。扉の向こうで敵が待ち構えている場合に備えて、お互いに両壁に背中を当ててハンドガンを構えた。俺はマナミさんに、指で三、二、一とカウントダウンをする。そして、掌紋認証で扉を開けた。
マジかー。悪い意味で大当たりだった。俺もマナミさんも敵に向かって引き金を絞る。サイレンサーつけてくれば良かった。クソッ。ミスったな。
敵の増援が来る前に、死体を確認する。ノートパソコンが転がっている。おそらく扉の解除を試みていた工兵とその護衛だろう。耳も良いマナミさんが「来る」と耳打ちしてきた。
慌てて隠れられそうなところを探す。だがその部屋に入ってから思い出した。
タキ主任の「不用意に部屋に入るな」という忠告を。
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