第6話 結果報告
またあの北棟の一階、奥の階段の下だった。
成美は、自分だけで行く、と言ったけど、朱理さんは、二人で行ったんだから二人で、と言ったという。それで、瑠音も連れて行った。
朱理さんは、成美と瑠音の報告を聞いたあと、自分が調べたところでは、ほかには漏れていなさそうだ、と言った。
「ありがとう」
と朱理さんは成美と瑠音に言う。
スーパー書記補に
「あとは、放課後、
と、朱理さんは続けた。
その結果が気になって、瑠音は、放課後、生徒会室に行ってみた。
放課後すぐだったから、だれもいない。
ほかのだれの姿も見えない。
スーパー書記補でもまだ来てないんだな、と思って、瑠音は生徒会室のドアを開けて入ろうとした。
生徒会室は、入ってすぐのところが図書館のように本棚の並んだスペースになっていて、その向こうが会議や作業用の机の並んだスペース、そしていちばん奥に、生徒会長専用の、パーティションで仕切られたスペースがある。
本棚の向こうはここからは死角になっている。
その机のスペースのところ、カーテンが半分だけ閉めた状態になっていた。
夏は、夕方になるとそちらから西日が射すので閉めることもあるけれど、いまの季節、遮光カーテンまで閉めることはめったにない。
どうしたんだろう、と、思いながら、ドアにかけた手が止まる。
危ういところで、ドアを引く前に、止まった。
瑠音は硬直してしまっていた。
「いっ……」
驚きの声が出そうになるのも押し殺す。
だれもいないのではなかった。
その本棚の死角すれすれのところに、いた!
カーテンに溶け込む、紺色の制服。
でも、白い襟、白い顔、そして髪の毛はごまかせない。
一人は、こちらに顔を見せているから、わかる。
いまは副書記になったスーパー書記補、朱理さんだ。
やっぱり来ていたんだ。
でも。
もう一人は?
肩の下で切りそろえた髪。
そして、すぐ横の机には、銀のフレームの眼鏡が端正に置いてある。
瑠音の背に電流が走った。
丹羽柚子!
その二人が、本棚の影で、カーテンを引いて外から見えないようにして、抱き合っている。
二人とも腰に手を回して、顔をくっつけたり離したり。
右へ左へ、体を、なめらかに、いや、少しぎこちなく揺すりながら。
朱理さんの目がこちらをとらえる前に、と、瑠音はさっとドアの横に身を隠した。
そして、何ごともなかったかのように、その場を離れる。
いくら女子校とはいえ……。
よりによって、生徒会室であんなことが行われているなんて。
こんなにも乱れているなんて!
自分も
それを棚に上げてのこの感想、というのもわかっていた。
そして、瑠音は安心した。
昼休みに朱理さんに
もしかすると、この朱理さんと丹羽柚子も、恒子さんに関心があるのではないか。
もしかして、あの別荘に行ったことがあるのではないか。
だから、あんなに、その
それが広がると、自分たちも「何か」を恒子さんに差し出したことまでわかってしまうかも知れないから。
でも。
朱理さんと柚子がこの関係なら、安心だ。
二人とも恒子さんと関係を持つことはない。
もちろん成美は強力なライバルだけど、成美は親友だから、いい。
「スーパー書記補」や「ザ・清楚美人」が加わったら、瑠音の地位はさらに低下してしまう。
そうではないことがわかって、瑠音は安心したのだ。
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