掃除ロボット
藤光
整理整頓
こんなことになってしまって、なんと言えばいいのか。いいえ、最初は息子も喜んでいたんです。ぐちゃぐちゃにしてしまっても、一日ですっかりもとどおりだって。ええ、おたくの掃除ロボットのおかげです。ときどきいますでしょう。身の回りを整理整頓できない人って。うちの主人がそうなんです。部屋を趣味の品物でいっぱいにしてしまって、マンガや雑誌、プラモデル、ゲームソフト、キャンプ用品……etc。自分の部屋をぐちゃぐちゃにしてしまう――。えっ、息子ですか、いいえそれは主人が。主人の趣味の品物をどうにかするためにおたくの掃除ロボットを買ったんです。もう藁にもすがる思いでした。ええ、それは私が。するともうすごくきれいにしてくれて。そうなんです、あんなにぐちゃぐちゃだった主人の部屋が見事に片付いて。私ったらきれい好きでしょう? 言ってませんでした? そりゃもう、うれしくなってしまって。そうそう息子のね。この春、就職したんです。ええ、おかげさまで。家を出てひとり暮らしをすることになりましてね。私心配だったものですから。あれです、主人に似た子で。いえワンルームのマンションなんですけど、すごく散らかしてしまって。一週間で部屋のなかがぐちゃぐちゃで。空き缶、お菓子の空き袋、コンビニ弁当の殻なんかをきちんと捨てないんです。お恥ずかしい。すぐに掃除ロボットを買って息子に送りました。すごくよろこんでました部屋がきれいになるって。最初は。でも、だんだん様子がおかしくなってきて。いえ、ロボットじゃなくて。なにいってるんですか、息子の方です。でも部屋が散らかりだして。またロボットを買って送ったんです。それでも追いつかないくらい息子は部屋を散らかしはじめて。いいえ、最近はなんですか、離れて暮らす家族を見守るサービスってあるでしょう。おたくの会社が高齢者の家族向けにやってる遠隔カメラのサービスね。私息子のことが心配で。だってほうっておくとほんとうにぐちゃぐちゃになってしまうんですから。だから、業務用のロボットを送ってあげたら、もういやだとか、ぼくのやりたいようにやらせてくれとか連絡がきて。けさなんですけど、画面で見る息子の部屋がほんとうにめちゃくちゃで。あんなに働いてくれていたロボットも壊れてしまっていてぐちゃぐちゃに。そんな、壊してませんよ。息子はそんな子じゃありません。とてもいい子で、私に似たきれい好きなんですから。ロボットを壊してぐちゃぐちゃにしていまうなんて。だから、もう一台新しいロボットを送ってあげようかと思うんですけど、いちばん強力な掃除ロボット売っていただけます?
掃除ロボット 藤光 @gigan_280614
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
「百年の孤独」日記/藤光
★7 エッセイ・ノンフィクション 連載中 37話
増税メガネ/藤光
★27 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます