Change Blossom Third

朱ねこ

Cherry Blossom

 私の身体を包んだ桜色の光が弾け飛ぶと、手足が勝手に動きポーズを決める。

 

「華麗に舞う希望の花! Cherry Blossom!」


 声が出て間もなく顔がかあっと熱くなる。


「なんなのこのセリフ〜!? しかもこの服

何ー!?」

「ブロッサムの正装ポメ!」


 『Change Blossom』と叫ぶように促した犬のぬいぐるみが私の右肩へよじ登ってくる。変身時に使った箱を私の手から奪うと蓋を開けて蓋の裏側に付いた鏡を向けてきた。

 鏡に映るのはいつものセーラーワンピースを着た私ではなく見慣れない私だった。


 胸に大きなリボンがあり、半袖と胸のすぐ下までの裾には半円のレースが縁取られている。左腰には桜の花びらが大小で寄り添い、ボリュームのあるフリルスカートが可愛らしさを主張している。

 履き口の広がったショートブーツを履かされ白のハイソックスで露出を減らされていた。


 腕には指の隠れない長い手袋をはめられ、手の甲には高く結われた髪と同じく桜の花が飾られている。

 現実離れしたふわふわな髪は色までも変わっていた。


「これはかなり恥ずかしい……」

「さっきより可愛くなったんだから感謝するポメ」

「余計なお世話ですぅー」


 この世界に私を呼び出した犬のぬいぐるみにむっとしつつ言い返す。


「くるポメ!」

「……わっ!?」


 振り下ろされた大きな耳をさけるために後ろに飛ぶと身長の三倍は空に浮かんでしまった。

 ぐちゃぐちゃにされた花畑に大きな耳で立つうさぎのぬいぐるみは視界から消えた標的を探すべくきょろきょろしている。


「何この力!?」

「これがブロッサムの力ポメ! チェリーカッターであいつの動きを止めるポメ!」

「チェリーカッター?」

「掌を上にして声にするポメ!」


 犬のぬいぐるみの言う通りに掌を空に向ける。

 

「チェリーカッター!」


 突然掌の上に大きな桜が現れ急速に回転し始める。


「これを投げろってこと!?」

「そうポメ!」


 地面に降り立つと共に狙いを定めて投擲すると、振り返ったうさぎのぬいぐるみの頭と身体が分離する。


「やった!?」

「まだポメ!!」


 大きな耳で支えられた頭は不気味に浮いている。胴体が円状に凹んだ地面にぼとりと落ちた瞬間、大きな耳を振り上げてこちらへ向かってくる。

 

「ひいいい!! こわいいい!!」


 反対方向へ一心に走る。

 

「もっと手っ取り早く倒せる方法はないの!?」

「チェリーパワーを拳に込めて殴れば内部から破裂するポメ!」

「それを早く言ってえ!?」


 チェリーパワーが何か分からないけど、とりあえず力を溜めればいいんだろう。

 走りながらうさぎのぬいぐるみの位置を確かめ死角となる上空に飛ぶ。


「あたれーー!!」


 落下しながら突き出した拳は光に包まれうさぎのぬいぐるみの頭部にぶち当たる。

 光の放出とともに布と綿が弾け飛んだ。

 

 ぐちゃぐちゃになったぬいぐるみだったものを見てへたり込んでしまう。


「ふええ、やっとおわった……」

「汚い花火ポメ。この調子で国王様たちを助けにいくポメ!」


 機嫌が良くなった犬のぬいぐるみにため息をつく。

 この危険な世界にまだ留まらないといけないのか。

 

「もう、お家に帰してー!!」

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