第5話 国王陛下にご挨拶
レミリアは人生で一番と言っていいほど緊張していた。体は小刻みに震え、汗と汗と汗で握り拳を開くことは難しい。顔も青白くなっており、とても見ていられない状態だ。レミリアがこんなことになっているのかを語るには、時間を少し巻き戻さなくてはいけない。
○
一行を乗せた馬車はのんびりと王都に向かった。
「わぁ、みんな楽しそうだね」とレミリアは窓の外を眺めていました。商業の盛んな隣町を通り過ぎている最中だったのだが、フランツが馬車を止めます。レミリアとマリナは顔を見合わせて不思議そうに尋ねました。
「お父さんどうしたの?」
「フランツどうしたの?」
「ああ、買い物でもしようかと思ってね」
そう言ってレミリアの手を取り、街を散策することになりました。レミリアはこんな風に街を歩いた記憶がなく、とても嬉しそうでした。そして、その姿を見ることができたフランツも満足しており、嬉しくなってたくさんのドレスや食べ物を買い与え、馬車も何台か増えたことにマリナは呆れていました。
そうしてレミリアが外の景色に反応する度に降りていたので、1週間ほどで着く予定が、さらに5日掛かって到着した。
「お、お父さん、その、もうお外見ないようにします」
「気にしなくてもいいんだよ。日にちは決められていないんだから」
途中から流石にレミリアも気にしていたが、フランツはいつものことだと気にもしなかった。それは国王にも呆れられている行動だったが、それだけ信用を得ているということだった。
予定と遅れて首都についた一行はすぐに国王の元へ向かうのでした。と言いたかったのですが、フランツが長旅で疲れただろうと、1週間ほどレミリアに休息を与えた。流石にマリナの小言は免れなかったみたいだが。
あまりゆっくりできない日々を過ごし、ついに国王夫妻に挨拶する日が来た。レミリアは怒らせたのではないかと、朝から緊張しており、満足に食事もできなかった。フランツは心配になり、先延ばしにするかい?と聞いてくる。胃痛の元なので早く終わらせたいレミリアは大丈夫だからと、フランツを急かすように屋敷を出たのだった。
○
国王夫婦についての話をマリナから事前に聞いていたレミリアだったが、聞いた話がかなり過激な内容だったために、恐怖と緊張に震えていた。
「クランベリー公爵とレミリア公女が国王陛下に謁見いたします」
そう言われて国王夫婦の前に並び挨拶をする。優しそうなお顔でレミリアを見ている二人に、緊張して体が小刻みに震えて出す。それでもマリナに教わった挨拶をしっかりと行えたレミリアは少しだけだが、挨拶だけだと聞いていたので安心していた。
「フランツ、私は安心しましたよ」
「いつも気にかけていただきありがとうございます、王妃様」
「後は奥さんを見つけてきてくれればいいんだが?」
「それは検討中でございます、国王陛下」
フランツは始終ニコニコしていたが、国王は逃さまいと昼を一緒に食べないか?と提案した。フランツは断ろうと思ったのだが、遅れてきたんだからという理由で帰ることは許されなかった。そして、予定になかった昼食会が始まることになる。
死神と呼ばれた少女と変わった貴族が出会う 月白藤祕 @himaisan
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