第4話 王への挨拶を控えて
路地から連れてこられたレミリアに対して、貴族としての最低限のマナーを学ぶように言ったのは執事長でした。フランツは「急がなくてもいいではないか」と言いましたが、王から養子の認可とともに娘を連れてくるようにと、手紙が届いてしまったために公爵家として、王命を無視するわけにもいけないので、急がないわけにはいきません。
「私もそうしたいですが、お嬢様が恥をかくのですから急ぐ必要がありますよ」
「…あのジジイ、めんどくさい手紙を寄越しよって」
「国王陛下のことをそんな風に言ってはいけませんよ。とりあえず、お嬢様にお話なさってくださいね」
「わかっているよ」
フランツは不満に思いながらも、レミリアの部屋へ足早に向かいました。どんな話であっても会話できると嬉しく思ったのか、ルンルンとスキップしておりました。その姿から使用人たちは主人の喜びを知ることができました。
扉をノックして入るとレミリアはおやつのケーキを食べており、その姿に侍女達が見入っていました。意外にもレミリアは屋敷の使用人たちから好かれており、暇さえあれば挨拶に押し寄せることが多々あるくらいでした。そして、ケーキの量が多いのも料理長が気に入られようと多めに作って、レミリアに食べさせていました。そのためか、屋敷に来てすぐの頃よりもふっくらとした気がしました。
「お、お父さん。どうしたの?」
侍女の横に並んでレミリアのことを見ていたフランツに気づき、話しかけました。
「リア、今度王都に行くことになったんだけど、その前にマナーを学んでくれないかな?最低限でいいんだけど…」
「…分か…りました。うまくできるか、分からないけれど、頑張ります」
「無理しないでね!挨拶できたらいいんだから」
「うん」
そうして、レミリアのマナーレッスンが始まりました。マナーを教えてくれる貴婦人は、フランツの唯一の理解者である侯爵家のマリナである。彼女はフランツの命の恩人であり、娘だという言葉を聞き、孤児であることを馬鹿にはしなかった。そして、最初の対面から丁寧な挨拶を心がけていたようでした。
「レミリア様、私が今日からマナーをお教えする先生となりました。どうぞよろしくお願いいたします。分からないことは何でも聞いてください」
「…はい、先生」
「レミリア様、緊張してしまうかもしれませんが、貴方は私よりも位が高く、皇女殿下の次に尊いお方なのですから、堂々としていても良いのですよ」
「でも…私は孤児で、平民…ですから」
「今は公爵家の娘ですよ。国王陛下がお認めになられたのです。何を言われようとも気にする必要はありません。分かりましたか?」
「…はい。そう思えるように頑張ります」
「ええ、私もレミリア様にそう思ってもらえるようにしっかりお教えいたしますね」
そんな会話をした後、レミリアは最初こそ不安だったが、自分に対しても優しく接してくれるマリナを良い人だと認識して、2回目からは警戒が解けたようでした。
国王陛下への挨拶まで一週間もなく、急いで詰め込まなければいけなかったが、レミリアはみんなが思っているよりも飲み込みが早かった。いや、早いというよりも元から知っていたのではないか、と思う速度で取得したのでした。
マリアはレミリアが教えたことを頷きながら、思い出しているように見えたので、もしかしたらどこかの貴族の出かもしれないとフランツに話した。フランツは驚きながらも、一度調べてみると言いながら王都への出立準備をしていた。
そうして、出発までに問題なく挨拶ができるレベルになったので、フランツとマリア、レミリアは王都に向けて出発したのでした。
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