第3話 奇妙な親子

「レミリア・リリー・クランベリー」


男の娘にならないかという提案に名を呼ばれた娘は驚いた。そして、何よりも意味がわからなかった。今まで自身を買った者に娘を養子にしようとした人間が一人もいなかったからです。もしもこの提案を受け入れれば、彼女が覚えている中で、初めての父親ができることになります。


「私は…」


自身の意見を言うこともめったになく、こんな突拍子もないことを言う人間がいることに驚いて、口ごもってしまった。


「すまないね、君をここに住まわせるにはこれが一番いいと思ったんだ」

「……どうしてそんなことをするの?」

「君の笑った顔が見たいからさ」


娘はもっとわからないと言ったように俯いた。


「そうだよね。突然こんなことを言われても驚くだろう。私が急いでしまったようだ。よければゆっくりでもいいから考えてくれないか?」


娘はわかったと小さく頷き、その日は人生で初めて柔らかいベッドでゆっくりと眠った。



朝が訪れると、一緒に食事をしようとフランツに呼ばれ、昼になる頃には街でショッピングを、日が傾いた時には街を見渡せる塔の上から夕陽を見ていた。娘を人間として扱う人も、この瞬間も何もかもが新鮮だった。そして思った。


(良い思い出をくれた人だから信じてもいいかもしれない。もし騙されても心残りはないかも……)


娘はフランツに告げた。


「あの、おじさんの娘になるという話を受け入れたいのですが……」

「えっ!?いいのかい!ありがとう!!!」


フランツは娘を持ち上げてくるくると回る。フランツは嬉しさのあまり周りが見えていなかったのだろうか、娘が必死に危険であると伝えてようやく止まった。ある意味心臓がバクバクしている。


「では、正式に君を養子として迎えることを許してくれますか?レミリア」


フランツは娘の前に跪き、片手を取って尋ねた。娘は少し照れながら、いや、夕日に照らされた赤い頬を隠すように頷いた。


「ありがとう!私のことは父……ふむ、おじさんでも何でも、呼びやすいように呼んでくれ。君の家族なんだから遠慮はいらないよ!私は君のことをリアと呼ぼうかな」

「……分かった。お、お父さん……ありがとう」


フランツはその響きを忘れないように、しばらく停止していた。そして、すぐさま執事に養子の申請書を国王へ届けるように指示し、嬉しそうに屋敷へ帰りました。


そして後日、認可されたことを伝える手紙が届き、娘は「死神」からクランベリー公爵の一人娘 レミリア・リリー・クランベリーとなりました。

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