ありがとう、そしてまたね

千求 麻也

ありがとう、そしてまたね

 高校の卒業式の日、真依と太一は校舎の裏で握手を交わした。


「ありがとう」と太一が言った。


「こちらこそ、ありがとう」と真依が答えた。


 彼らは数日前に別れを決めたが、まだぐちゃぐちゃな感情が残っていた。沈黙したまま2人は見つめ合っていた。真依は何か言おうとしたが喉が詰まって言葉が出てこない。太一は真依の気持ちを読んで彼女を抱きしめた。


 真依の肩が震え出す。瞳から溢れた感情が涙となって太一の肩に落ちた。それと同時に太一もこらえきれなくなり声を押し殺して泣いた。しばくして太一は真依を離し、彼女の泣き顔を見て笑った。


「ぶっさいくだなあ」


 真依はぐちゃぐちゃの泣き笑い顔になりながら太一の胸を叩いた。


「自分だって」


「これからもずっと友達でいよう」


 気丈に振る舞い、太一が言った。


 真依はただ頷いた。


 真依と太一が出会ったのは幼稚園の頃で、それから10年以上の歳月を共に過ごしてきた。いつも真依を支えてくれた太一のことを、彼女は今更ながらに感謝していた。

 太一は真依が高校時代から英語に興味を持ち、英語の勉強を頑張っている姿を見てきた。真依が海外の大学へ留学し、国際的なビジネスの分野で活躍するという夢を応援していた。


 太一の進路は地元の大学へ進学することだった。彼は高校時代から地元に根ざした活動に熱心に参加し、地元のコミュニティを盛り上げることに興味を持っていた。太一の夢は地元をより豊かにすることだった。彼地域社会に貢献し、地元の人々の生活を支えることが自分自身の使命だと考えていた。


 2人は互いの進路を尊重し、最後まで愛情を持って別れることで互いの成長を支え合い、新しい人生に進むための力を与え合うことができると思った。


 彼らはもう一度抱きしめあった。その時、太一は真依にキスをしたいと思ったが、代わりに真依の両手を握った。


「またね」と太一が言った。


「またね」と真依が答えた。

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