ぐちゃぐちゃになった押し入れのぐちゃぐちゃになった思い出

矢斗刃

ぐちゃぐちゃになった押し入れのぐちゃぐちゃになった思い出


押し入れ・・・ぐちゃぐちゃの中であるものを探していた。

昔遊んだカードゲームのレアが高値が付いた。

俺達はそれを懐かしがろうと宝探し中だった。


押し入れの中の奥、思い出のカードを探し出すために・・・


「あっこれ私が大好きだったぬいぐるみ!」


それに抱きついている幼馴染。


「どこに行ったと泣いていたと思ったらうちにあったのか?」


「犯人は貴方だ!」と俺にぬいぐるみの腕を向けて遊んでいる。


「そんなことよりカード。」

「そんなことより思い出だよ。」


「もう放さないからね。」とギュッと抱き締めている。


「ちゃんと消毒しろよ!」

「もうデリカシーない!」


幼馴染とのやり取りを楽しみつつ、ガサゴソと漁っていく。


「おっこれじゃないか?」と靴の入っているような箱を取り出した。

「カードが靴の箱の中にあるなんて!思い出をなんだと思っているの?」


凄い目で睨まれた。


無視して箱の蓋を空ける。

「ぐちゃぐちゃだね!」

「そうだな。」


確か親父に見つかると焦ってカードをすべてこの中に入れてしまったのだ。

見つからなくてよかった。


しかしなんでこのカードゲームを辞めたんだ?

何か思い出しそうな気がする。


「この中から見つけるの?」

「ああ、先は長そうだ。」


ぐちゃぐちゃに混ぜ合わせられたカードの裏側。

この中から見つけようと思えば骨が折れる。


一枚一枚、雑魚カードを捲っていく。


「あっ思い出した!」


「何を?」


「このぬいぐるみの名前、ななみ!」


「あっ、そう?うん、何か思い出しそうな。」


目の前に折れ曲がったカードがある。

何かこう嫌な予感がした。


それをゆっくりゆっくりめくっていく。


「召喚!折れ曲がったレアカード。」


辞めた理由は・・・

「思い出したぁ!レアカード曲がって泣いてた!」

「指さすな!」



親父から隠すように無理やりカードを詰め込んだせいだった。

それがいけなかったのだろう。


悲しみを押し殺すように、このカードゲームを再び封印したのだ。


俺の肩を幼馴染が掴んでくる。


「カードを売ろう。」とにこやかに言う。

「お前、俺の思い出をなんだと思っているんだ?」


確かに折れ曲がったカード意外にも、そこそこな値段はするだろう。


しかし、幼馴染の手の中には・・・ぐちゃぐちゃにされた小学校の時のテストの答案用紙があった。


「そ、それはどうしたのかな?」と俺の額から汗が噴き出す。

「なんだろうね。うふふ。」と笑う幼馴染。


「これってなにかなぁー。」とゆっくりゆっくり広げていく幼馴染。

「やめろ、それだけは広げて見せるな!」


その結果がどうなったのか?

俺は幼馴染に弱みを握られて泣く泣くカードを売りに出す。


そのお金で、ご飯を奢らされた。

俺の思い出はここに食べられてなくなったのかもしれない。


ただ、折れたレアカードだけはキラキラと輝いて、俺の手元で苦い思い出として生き続けていくだろう。


幼馴染がデザートまで食べているのはもう少し遠慮して欲しいな。


「おいしい。」


そんな笑顔に消えていったカードたちは、本望だったのかもしれない。

そう思うことにした。

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