ぐちゃぐちゃ

ぐちゃぐちゃ

「ああもう頭ン中グチャグチャ!!」

「どの話？」

「ぜんぶ!!今日の出来事ぜんぶ!!」

「そうね。まず、朝イチで取った電話が超クレーマーでアホボケカス行き遅れクソ女と罵詈雑言、課長も見て見ぬふりで助けてくれず、一時間たっぷり棒に振った」

「行き遅れって何！勝手に足すな！あとその前にまだあるっ！」

「えっと、通勤電車で超特大のスーツケース持ち込み外国人観光客軍団に遭遇、おろしたてのストッキング盛大に伝線した話？」

「あいつら許せん……超邪魔だしずうっとキャッキャしてて、急ブレーキでよろけたら大爆笑だよ？ひどくない?!」

「そしてコンビニで新しいストッキング持ってレジに並んでたら、前にいたお爺さんが決済画面が出ないってパニくるわ、若いバイト女子がオロオロして泣き出すわ、店長が出てきた頃にはタイムアップで、伝線ストッキングのまま会社まで全力疾走。なのにエレベーター満杯で五階まで階段を駆け上がり、更衣室で私から予備のストッキングを奪ったと」

「人聞きの悪い。買って返すよ」

「午後の会議で使う資料、とっくにPDFで共有かけてたのに、昼休み直前に部長から『二部だけプリントアウトしといてくれる？』ってお達し。コピー機動かしたら紙詰まり、直して再開したら今度はトナー切れ。ストックも空で総務に駆け込んだら『予め言ってもらわないと』て舌打ち＆溜息。ホチキス綴じてやれやれと思ったら手についたインクで表紙汚損、一枚だけ再コピー、ホチキス外してまた綴じて。で、昼抜きのまま終了と」

「お腹空いた……」

　店員が熱々の石焼ビビンバを二つ運んできた。

「いっただきま」

「待って、よーく混ぜてから食べるんだよコレ。ほらこんな風に」

「ああなるほど……よし、混ぜようじゃないの心ゆくまで。今日という日を締めくくるに相応しく！」

　二人の女は無言で箸を動かし続けた。

　何もかもがぐちゃぐちゃに混ざるまで。