第3話 人生の転機

カチャカチャと慣れた手つきでお茶を入れ持ってきてくれるおばあちゃん。


「大変だったわねぇ」


優しい笑顔で微笑む顔は私の不安も全て包み込んでくれる。


「貯金もあるし、すぐにすぐって訳では無いけど働かないとなーって思ってるの。でも次働く所が前のようにブラック企業だったらと思うと…。」


はぁーとため息をつきながらおばあちゃんに呟く。

ここでうだうだ言っても解決しないのは分かってるんだけど誰かに聞いて貰わないと気が滅入りそうだ。


お茶を飲んでいるとおくからふふふふと微笑みながらおばあちゃんが紙とペンをもってサラサラなにか書き出し、私を見つめてくる。


「琴音ちゃんが良かったらだけどここで住み込みで働かないかしら?」


ウンウンそれもありかなぁ……え???

おばあちゃんが唐突に言い出したことに理解が追いつかない。


「えっと…?ここで住み込みで働く…?ちなみに何をするのかな??」


おばあちゃんが冗談を言ってるようにも見えないが働くも何もただの一般家庭だ。

おばあちゃんはもう80歳をなろうとしている。

特に商売をやっているわけでもない。

かと言って悪事に身を染めるような人でもない。


「とりあえず手取り25万でどうかしら?」


ふふふと微笑むおばあちゃんが急に恐ろしく見えてくる。

これから私は臓器を売って過ごすのか…はたまたどこかへ売り飛ばすのか…

今までの人生で関わってきたおばあちゃんの姿が走馬灯のように思い出し浮かぶ。

人は見かけに寄らないの…かも…?


「お、お、お、おばあちゃん…私の臓器はそんな高く売れないし人身売買にも向いてないよ…地味だし。」


冷や汗をかきながらしどろもどろで呟く。

それを聞いたおばあちゃんは目をまるーくしながらケタケタ可愛らしく笑った。


「ごめんごめん…変な誤解をさせたねぇ…。特に何か売りつけたりしたいんじゃなくて私の余生の話し相手になってもらいたいのよ。」


おばあちゃんはポツリポツリと語った。


旦那さんがいなくなってから家が広くて仕方ない。今は1人でも生活出来ているがこのまま歳を取り続けたらそうゆう訳にも行かなくなるだろう。それに残り少ない余生なら楽しく思いついた事をやってみるのもありなんじゃないかと言ってくれた。


…私でいいんだろうか…?

特に仕事しか取り柄のない私で…

それに働いてなさそうなおばあちゃんから毎月25万も貰っていいんだろうか…


「おばあちゃん…ありがたい話なんだけど大事なお金と大事な家をそんな簡単によその子に上げようとしたり、敷居を跨がせたりしちゃダメだよ…!ほら!私がもしかしたら悪い人かもしれないでしょ????それに…それに…」


色々と悩みながら躊躇する私に一言。


「食費光熱費込みで週休2日!それにお金なら心配しなくても実はとってもお金持ちなのよ…」


うっ…少し心が揺れる…

好条件すぎる…。

これを逃すと多分二度とないだろう。


「あと私は人を見る目だけは自信があるのよ…!私を信じてみない??きっと楽しくなるわ!」


…そこまで言ってくれるなら……と私はおばあちゃんの家に転がり込むことになった。

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